狐を被る〜or小説

□第16話
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無事に幽助と桑原を家まで送り届けた桃花と蔵馬は二人で並んで歩いていた

さっきから蔵馬の視線を感じていた桃花は思わず足を止める


「羽衣さん?」

『…あなたがどう思おうとも(わらわ)は羽衣
幽助を守るためだけに居るの
あなたに関係ないんだから一々突っ掛かって来ないで』


言い切った

そう思ったと同時に悪寒が襲う


「へぇ…」


小さく溢すその声色は酷く冷たく、桃花は早速後悔し始めた

あぁ…

何も言わずに逃げてればよかった…


「確かに関係ない事かもしれません
あなたにとっては幽助が全て
俺たちなんてどうでもいいんでしょう
ですが俺はそう簡単に納得は出来ないんですよね」

『…っ』


後退ろうとしたが蔵馬に腕を掴まれる

その力の強さに振り解く事も出来ず、桃花はうるさいぐらいに緊張で高鳴る鼓動を感じながら蔵馬を見上げる


「でも…今はそれでも良いですよ
いずれまた…」


そう言ってスルリと頬に指を滑らされ、その反対の頬を舐め上げられた桃花は有らん限りの力で蔵馬を突き飛ばすとそのまま妖術で姿を眩ました

全速力で屋敷に飛んで帰る桃花は鼻についた濃厚な薔薇の香りを頭を振って誤魔化しながら舐められた頬を拭う


『くらまなんかきらいだぁ…』


泣きべそをかきながら幻海への声掛けもせずに風呂へ直行する桃花は出来る限り体を綺麗に洗う

薔薇の香りではなくお気に入りの石鹸の香りに包まれ、ようやく落ち着いた桃花はもう忘れようと疲れ切った体を引きずって幻海の元へ向かった


「あんた、どうかしたのかい?
すぐに風呂に行ったようだが…」

『なんでもないよ
それよりもただいま
今回は無傷だよ
幽助はまぁ…ボロボロだったけど大丈夫そうだった
雪菜ちゃんもちゃんと助けれたしね』


ふわふわと嬉しそうに笑う桃花に幻海はホッとしたように笑みをこぼした


「そうかい
無事でよかったよ」

『うん』

「それよりもあんた、髪がまだ濡れてるじゃないか
全く、せっかく綺麗な髪をしてるんだ
ちゃんとしないと駄目だろう?」


そう言ってタオルで優しく髪を拭いてくれる幻海に桃花は嬉しそうに笑みをこぼした

こんな穏やかな時間がずっと続くと

そう思っていた桃花は知らなかった

運命が絡み合い

原作(シナリオ)と複雑に混ざり合って

桃花の元へ襲い掛かってくる事を…




2018/04/10

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