狐を被る〜or小説

□第15話
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幽助の無事を確認したものの、蔵馬に羽衣の正体が桃花だとバレたかもしれないと不安が募る

だがこれ以上接触するつもりもない桃花は幻海との穏やかな生活に浸っていた


「オイ」

『飛影?
こんにちは』


飛影の突然の訪問はすでに片手では足りぬ程で、桃花は最早驚く事もなくにこやかに迎え入れ、お茶を出す

そんな桃花に飛影はコトリとビデオテープをテーブルの上に置いた


『これは?』

「霊界からの指令だ」


なぜコレを見せたのか飛影の真意が分からず彼を見つめれば、ビデオデッキを貸して欲しいと言う


『幽助くんに渡さなくてもいいの?』

「…」


押し黙る飛影にそれ以上何も言わずに桃花はビデオを受け取ってデッキにセットする

そしてビデオが再生すると、コエンマが映って喋り出す


{今回の任務は、ひとりの少女を救出することだ}


ビデオの内容が進むにつれて飛影から只ならぬ空気を感じた

人間の欲のために捕らえられた少女

その妖怪は飛影の妹だというのだ


「雪菜…」


飛影が彼女の名を呟くのを桃花は横目で見る

その瞳は殺気立っており、コレはまずいのではないだろうかと桃花は思い、彼の手に触れる


『幽助くんへの指令ならこのビデオ、彼に渡さないと』

「…雪菜はオレが助ける」

『勿論助けに行けばいい
でも“幽助くんへの指令”でしょう?
一緒に助けに行けばいい』

「…」

『幽助くんは頼りになるよ
それに…コレを見た以上は私も行く』


ようやく飛影は桃花へと目を向ける

その目は僅かに揺れていて、彼の困惑を表していた


「…なぜ?」

『あなたには恩がある
それに…ああいう人間は嫌い
あんな人間に囚われた彼女を救いたい
そう思うから』

「…」

『準備するから
このビデオを幽助くんに渡してきて
お願い』


桃花の言葉にゆっくりと頷いた飛影はビデオテープを持って消えた

飛影を見送った桃花はすぐに立ち上がって幻海の元へ向かう


『お婆ちゃん』

「…また幽助の手助けかい?」

『今回は飛影の手助け
彼の妹を助けたいの』


真っ直ぐ見つめてくる桃花に幻海はゆっくりと息を吐いた


「前回みたいな事になるようなら次はないよ
気をつけて行っといで」

『ありがとう、お婆ちゃん』


そう言って笑顔を見せる桃花に幻海も表情を綻ばせる

すぐに支度をしに自室へ向かう桃花を目で追いながら、幻海は静かに茶を啜る

幻海に心を開くがそれ以外に関心を寄せなかった桃花

そんな桃花が初めは幽助へ

そして知られていないと思っているだろうが服を選んでもらった相手や度々出掛けて会う相手

そして真っ黒の小さな妖怪、飛影

桃花との繋がりを持つ者も増えた


「…あの子はもうひとりぼっちじゃない」


心残りが減り、嬉しいはずなのにどこか寂しいと思う自分に苦笑いをこぼしながら幻海は冷めてしまった茶を飲み干したのだった




2018/04/08

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