狐を被る〜or小説

□第14話
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四聖獣の一件から数日経ったある日

桃花は幽助の様子を見に行こうと出掛けていた

まだ全快ではない桃花が出掛けるのを幻海は渋っていたのだが、桃花がどうしてもと押し切って渋々承諾した

それでも心配だからとお守りを持たせたのだが桃花が山を降り、街に出て少しした頃にそのお守りの紐が千切れた

その瞬間、桃花自身から妖気が溢れ出して近くに居た妖怪が襲い掛かってきた

桃花は慌てて人気の無い裏路地に入り、襲い掛かってくる妖怪を尾で八つ裂きにする

だがそれだけに留まらず、妖気が溢れ続けた

四聖獣の一件で無茶をしたせいか、妖気がまともにコントロール出来ないようで桃花は慌てて尾をしまい、そのままその場から離れる

だが桃花の妖気に無数の妖怪が集まってくる

妖気を無理矢理抑えようとすれば尾は使えず、霊気も使えない

襲い掛かってくる妖怪達に霊気を使って攻撃しようとすれば妖気が暴走してしまい、余計に妖怪を集めてしまう

桃花は妖気を抑えながら追ってくる妖怪達を撒こうと逃げ回るしか選択肢は無かった

だが地理に詳しくない桃花は中々妖怪達を撒くことが出来ずに疲弊するばかり


『ハッ…どう、しよう…』


息を切らしながら未だに追ってくる妖怪達を横目に見る桃花

物陰に隠れてやり過ごそうとしたちょうどその時、桃花の持つ携帯が鳴り出した

慌てて電話に出ながら、音に気付いた妖怪達から逃げようとまた走り出す桃花に通話相手が様子が変だと気付いたのか声を掛けてくる


{桃花?
どうかしたのか?}

『ハッ…ご、ごめんなさ…
今、追われてて…
また掛け直すからっ』

{桃花?
何があった?
今どこに…}

『ごめんなさい!
また…』


桃花はすぐに電話を切って走るのに集中する

だがちょうどその時、目の前に黒い影が現れた

いきなりの事で桃花はスピードを緩める暇もなくその影にぶつかってしまうが、相手は危なげなく桃花を抱きとめる


『ぁ…か、らすさ…』

「何故そんなに弱っている?
こんな雑魚相手に逃げるばかりでいるなんて…」


長い黒髪に鼻と口を覆う独特な形のマスク

その男、鴉は桃花を追っていた妖怪達を一瞥し、桃花の頬を撫でた


「随分と妖気が不安定だな
霊気も…
何かあったのか?」


鴉がそう尋ねる横で、妖怪達が爆発していくのを桃花は呆然と見ていた

そんな桃花を抱き上げ、歩き出した鴉に桃花はハッとして慌てる


『は、離して!
一緒に居てたら…』

「そんな状態で一人にしていたらまた同じ目に遭うことになるだろう
今は黙って大人しくしていろ」


聞く耳を持つどころか正論を返されて押し黙るしかない桃花はとりあえずまた妖気が暴走しないように意識を集中させる

だがやはり上手くいかなくて

不安定に揺れる桃花の妖気に鴉は目を細めた


「あぁ、良かった
無事だったんだね」


裏路地から出た所で立っていたオールバックの黒髪の男が桃花を見て笑みを浮かべた


「電話先で様子がおかしかったから心配していたんだ」

『左京さん、鴉さんに言ってください
今、私と居たら危険なんです!』


そう必死に桃花は訴えるが、左京は笑みを崩さない

鴉は無視して左京の後ろに停車している黒のリムジンへ桃花を抱いたまま乗り込む


「随分と不安定そうだな、お嬢ちゃん」

『戸愚呂さん…』


中に居たグラサンを掛けている男、戸愚呂が鴉に抱かれた桃花を見てすぐに弱っている状態に気付く

気まずそうに目をそらす桃花に後から乗り込んできた左京が優しく問い掛ける


「なぜ妖怪に追われていたんだ?」

『えっと…』

「お嬢ちゃんの妖気につられて…でしょうね」


口ごもる桃花

代わりのように戸愚呂が答え、そして彼の隣に座っていた長髪の男、戸愚呂兄が続ける


「桃花チャンの妖気は魅力的だからな
そこらの雑魚妖怪だったらすぐに理性を失う
なのにこんな風に撒き散らしていたら誘ってるとしか思えないぜ」

『…』


気まずそうに口を噤む桃花は左手首に施された術式に触れる

その術式は桃花自身がコントロールし切れない妖気を抑えるためのもの

だがその術式は幻海が居なければ最大限の効果は発揮されない

不安気に、そして縋るように術式に触れながら桃花はまた溢れ出そうな妖気を抑えようと霊力を高めるが上手くいかず、ジワジワと体力を削られる




2018/03/19

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