狐を被る〜or小説

□第13話
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*お礼の問答*




妖魔街から帰還して一日が過ぎた

艶やかな漆黒の毛並みの十本の尾が眠る桃花を守る様に揺れるのを横目に、幻海は腹の傷に霊波動で治療を施す

経過は悪くないし妖力も霊力も回復している

だが桃花はまだ目覚める様子はなく、幻海は小さく溜め息を吐いた


「バカな子だね…
早く起きてあたしにご飯を作っとくれ
あんたの作った料理が恋しくて仕方ないよ…」


治療が終わると同時に丸まって眠る桃花の頭を撫でながら、幻海は小さく呟いた

あんたを心配してる奴も居るんだ

早くお目覚め…

幻海は結界を施した部屋の外

屋敷から少し離れた場所を彷徨いている飛影の妖気を感じていた

彼が居るであろう方を一瞥しながら、苛立った様子の妖気の揺らぎに笑みをこぼした

一方、飛影はというと…


「チッ…」


邪眼を使っても幻海の結界によって阻まれ、桃花の様子を知る事が出来ない苛立ちに舌打ちをこぼしていた

屋敷全体を覆う結界は決して侵入を阻むものではない

だが訪ねるのも憚れる飛影は邪眼で様子を伺っていたのだが、結界のせいでそれは叶わなかった

桃花の部屋やその周りには入念に結界が張ってあるのか、部屋の様子は以ての外

部屋の近くですらボヤけてまともに状況を把握出来ない


「なぜこのオレが見舞いなんざ…」


吐き捨てようとするものの、桃花の様子が気になって仕方ないのも事実だった

飛影は顔をしかめ、また一つ舌打ちをこぼすが消える様にその場を後にする




2018/03/16

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