狐を被る〜or小説

□第12話
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*心移ろう*




幽助と桑原を運びながら蔵馬と飛影、桃花は人間界へと戻ってきた

人間界に戻ってすぐに桑原の意識が戻り、彼は自分の家に幽助を運ぶように言って桃花達を家へ案内した

彼のベッドへ幽助を寝かせると桃花はすぐさま幽助の傷に治療を施す


「羽衣さん、これ以上霊力を使うのは…」

『大丈夫だから…
あなたは自分や桑原くんの治療を』


聞く耳を持たない桃花は一通り幽助の体の傷を癒すまで黙り込んだ

そんな彼女を横目に、蔵馬も桑原や自分の傷の治療をする


「浦飯の母ちゃんには俺からうまく言っとぜ」

「じゃあ幽助の事は頼んだ
また明日の放課後にでも様子を見に来るよ」


意識の戻らない幽助

だが蔵馬も学校や家のことがあるために帰らなくてはならない

桃花自身も幻海の元へ幽助の事を報告しなくてはと帰る事にした

玄関先まで見送ってくれた桑原に別れを告げながら桃花は蔵馬、飛影と共に彼の家を出た


(わらわ)はここで…』

「あ、待って羽衣さん!」


呼び止める蔵馬を無視してその場から消えた様に妖術で移動した桃花

少し離れた裏路地に降り立ち、その場に崩れ落ちる様に座り込んだ

桃花は被っていたフードを脱いで己の腹の傷を見る


『…しばらくは無理出来ないな』


尾を出して体を休めないとと思いながら、桃花は深く息を吐いた

ここから家まで戻るのしんどいなぁと呟く桃花の目の前に、黒い影が降り立った


『っ!?』

「…貴様、この前蔵馬と一緒に居た女だな」


桃花の前に現れたのは飛影だった

邪眼で桃花の後を追ってやって来た彼は座り込んでいる桃花を見下ろす


『なっ…な、なんで…』

「…」


飛影自身もなぜ自分が彼女を追ったのか分からなかった

蔵馬の傷を自らに移し、幽助のためにと必死になる彼女が気になった

妖力を持ちながら霊力も操る彼女が気になった

養殖人間との戦闘でもその身のこなしに目を奪われた

戦いたいと思った

けれどもわざわざ邪眼を使って追い掛ける理由にはどれもならない


「…幽助とは知り合いなのだろう?
なぜわざわざ隠していた」


思い付いた疑問をそのまま口にすれば、狼狽えつつも答える彼女


『幽助くんは私が妖力を使える事を知らない
今回の事はコエンマに頼まれてやったことだから幽助くんが知る必要はないと思ったの
今回だけのことだし、それに…』

「…なんだ?」

『…蔵馬に知られたくなかったの
前に会った時に色々嘘ついたから気まずくって…』


そう言って俯く桃花はまた嘘を重ねた事に後悔の念を抱く

正確にはどれも嘘ではない

でも一番の理由は原作に関わる気がなかった

だから主人公組の面々に自分の事を知られたくなかった

幻海の元へ身を寄せている以上は幽助と桑原は仕方ないと諦めていたものの、蔵馬や飛影にまで自身の事を教える気は桃花には全く無かったのだ


「蔵馬の傷…
貴様自身に移したのはなぜだ?」

『…知ってると思うけど、彼に服を選んでもらったの
その上、買ってくれたものもあったからその御礼に…』

「貴様はバカか
いくらなんでも釣り合わんだろ」

『だ、だって他に思い当たらなかったし…』


呆れて物も言えないとはこの事かと思いながら飛影は溜め息を吐いた


「そんな状態でどうやって帰るつもりだ?」

『…別にどうとでも』

「ならさっさと帰ればいいだろう
何をこんな所で油売ってるんだ」


本当は動けない桃花は飛影の嫌味にも言い返せずに目を逸らす

飛影はまた一つ溜め息をこぼしながら桃花を抱き上げた


『なっ!?』

「喚くな、落とされたいのか?」


そう言って物凄いスピードで移動する飛影に桃花は口を噤む

なぜこんな事をしているのかと思いながらも飛影は桃花の住む幻海の屋敷に向かった




2018/03/15

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