狐を被る〜or小説

□第10話
1ページ/2ページ

*青龍*




灼熱の白虎の遊技場を出て落ち着いた桃花は蔵馬の手を借りなくても立てるようになっていた


「オメェ大丈夫かよ…」

『暑いのは苦手なだけよ
それに…』


押し黙る桃花が思い出すのは羽衣狐として生きたぬら孫の世界のこと

鵺を産み落としたその後…

私は鵺の…

晴明の手によって地獄に落とされ、地獄の業火に焼かれる筈だった

でも鵺を産まなければリクオの…

彼らの世界を乱すことになる

でも死ぬのは怖くて

地獄に落とされるのが怖くて

その相反する想いに板挟みになり

八年間もの間ずっと悩み続け恐れ続けた

それ故に火が…

熱が恐ろしく感じるようになった


『…もう大丈夫だよ』


大丈夫…

大丈夫…

私はまだ大丈夫だから

そう言って先へ進む彼女を蔵馬と飛影は険しい表情で見ていたが、先を急ぐ為に何も言わずにそのまま進む

長い階段の先

行き着いたのは6つの扉がある行き止まりの部屋だった

蔵馬が言うに正しい道は一つ


「桑原、どの道行きゃ良いと思う?」

「待て
何故こいつに聞く」


真っ先に桑原に頼る幽助

飛影は不信感丸出しで問いただすが桃花が大丈夫だと答えた


『幻海師範の門下生選考会で霊感能力に関してはトップの成績を誇っていたし
魔性の森でもトップで森を抜けたからね
こういうのは彼が一番頼りになるわ』

「…ん?
なんで羽衣が幻海ばーさんのあの試験のこと知ってんだよ」


幽助の疑問は最もだった

しまったと桃花も息を呑むが、ふとある事を思いつく


『…桃花さんとは仲良しで、色々聞いてるの
幽助のことも桃花さんから頼まれてね』


己自身である桃花の友人とすれば話も合わせる事など造作もない

桃花の説明に納得した幽助だったが、だが蔵馬は違った

山吹さんと同一人物なのだろうかと思っていたが、友人だったのか?

目の色を変えた彼は桃花の腕を掴む


「桃花って…山吹桃花さんのことですか?」

『…えっと、お知り合いですか?』

「…えぇ、まぁちょっと」


山吹さんと羽衣さんは別人?

だが声も背丈も匂いすらもこんなに似ているのに…

悩む蔵馬をよそに、桑原がどの扉を行けばいいか探る


「右から2番目だ!」

「よっしゃ
じゃ行こーぜ!」


進む道が示された

蔵馬はこの迷宮城から出たら詳しく話を聞こうと心に決めながら幽助と桑原の後に続く


「本当に大丈夫なんだろうな」


短い付き合いなものの、桃花の言葉を信用していないわけではない飛影ではあったが、桑原は信用したくなかった

そんな彼に桑原は自信満々に言い放つ


「へ!
こー見えても迷路や罠の回避は俺の十八番だぜ!」

「…間違っていたら殺す」

『まぁまぁ…』


むくれる飛影を窘めながら桃花は幽助と桑原の後に続き、飛影と蔵馬もその後に続く




2018/03/11

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ