狐を被る〜or小説

□第9話
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*白虎*




「蔵馬、キズは大丈夫かよ…」

「ああ、羽衣さんのお陰でね
他の傷も大した事はない」

「とはいえ四聖獣相手だぞ
まともに戦えるのはオレと幽助とその女だけ
残り三匹か…」


飛影の言葉に桃花は僅かに反応を示すが、何か言うわけでもなく

実際は蔵馬の傷を負った桃花は戦力に加えられるには厳しいものがあるのだが、そんな事を口にするわけもなく

彼女は腹の傷を治すのに専念していた


「おい!
なんで俺が数に入ってねぇーんだよ!!」

「貴様なんぞ数に入れる訳がないだろ
死にたくなければ逃げても構わないんだぞ」


仲が悪い二人は睨み合うがなんとか幽助が宥める

桑原は己の霊剣を披露しながら次は自分がやると言い張った


『…なんでもいいけど、これ以上幽助の手を煩わせないでちょうだい
あと悠長に喋ってるけど人間界はもういいのかしら?』


桃花の絶対零度の声に押し黙る桑原と飛影

だがその時だった

ヴァォォオォォオオォ!!!!


「「「「!?」」」」


まるで地獄の底から響き渡る様な咆哮

そんな雄叫びが城に響き渡った


「な、何だ今のスゲー叫び声は!?
この世のものとは思えねェ…!!」

「…白虎の雄叫びだ
彼はどうや相当ご機嫌ナナメの様だ」

『耳障りだわ…』


小さく呟きながら桃花は走り出した幽助達の後を追って自分も走り出す


「こっちからだ!」

「行くぞ!!」


一同は白虎の雄叫びが迷宮城中に響き渡るような声の元へ向かう

近付けば近付くほど耳をつんざく様なその雄叫びは未だに続き、廊下も地震が起きた様にグラグラと揺れる

長い廊下を駆け抜けると、漸く人間界のものとは程遠い外の光が見えた

細長い渡り廊下と円形の闘技場を挟んで向こう側に待ち受けていたのは、二番目の四聖獣である白虎だ


「わざわざオレ様にまで足を運ばせやがって
クソ虫共が…
使い走りの玄武を倒した位でイイ気になるなよ」


喚く白虎を無視して桃花は桑原を見やる


『アレを相手に出来るの?
(わらわ)が行こうか?』

「ばっ、羽衣ちゃんに行かせるわきゃねェだろ!!」

『…』


引っ込みがつかないだけかと思いきや真剣な眼差しの桑原に桃花はムッと顔をしかめる


『男ってほんとにどいつもこいつも…』

「あはは、まぁそう言わずにね」


引き際を弁えろよとボヤく桃花に苦笑いをこぼしながら蔵馬は闘技場に向かう桑原を見る

白虎はそんな桑原に自ら相手をする事もなく、己の毛から分身獣を作り出して差し向ける


「…話にならんな
あの程度の太刀さばきではなぶり殺されるのは時間の問題だ」


四匹の分身獣に遊ばれている桑原を見て飛影が冷たく吐き捨てた

桃花は幽助の様子を見て目を細める


(わらわ)ならばあの程度の雑魚、一瞬で消すことが出来るが?』

「だが…」


桑原は諦めておらず、こちらが動けば容赦無く白虎の前に自分達へ霊剣を向けてくるだろう

桃花は痛みと理解不能の現状に小さく息を吐いた


『見栄や意地でどうにかなるものかしら…』


400年前にぬらりひょんに敗れた羽衣狐

あの時の二人の力の差は歴然だった

だがぬらりひょんは羽衣狐を打ち破った

記憶でしか知らないものの、あの時のぬらりひょんは意地と桜姫への想いだけで動いていた


『…意外とバカに出来ないものね』


知恵を働かせて分身獣を串刺しにする桑原を見ながら桃花は笑みをこぼした




2018/03/10

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