狐を被る〜or小説
□第5話
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*妖魔街へ*
幽助が帰り、静かになった屋敷
ちゃんと帰ったか心配で妖術を用いて様子を伺う桃花を横目に、幻海は茶をしばいていた
ふと桃花は幽助の周りに飛ぶ虫に気付く
その虫を探ると、その虫と同じく妖気を纏った虫が町に多く彷徨っている事に気付き桃花は瞑っていた目を開く
『お婆ちゃん、なんか様子が…』
「なに…」
その時、幻海が見ていたテレビが突然チャンネルが変わった
テレビに本来の姿である赤ん坊の姿のコエンマが映し出された
{突然すまん
緊急事態なんだ}
妖魔街に住む四聖獣が人間界への移住権を求めて、霊界を脅迫してきたんだと言うコエンマ
桃花が見た虫は四聖獣が送った魔回虫らしい
数千匹の魔回虫が町に放たれ危険な状態で、四聖獣の持つ虫笛を破壊しなければ大変な事になると言う
{今、幽助を向かわせている
飛影と蔵馬も向かわせるつもりなのだが、相手は四聖獣だからな…
だから桃花、頼む
手を貸してくれないか?}
「霊界探偵の件は桃花は前に断ったはずだよ
第一にこの子に戦闘は…」
{一刻の猶予もない緊急事態なんだ
だから…}
四聖獣、虫笛
そういえばこんな話があったな
どうにかなるのは分かっているが…
この世界には“異端分子”が居る
そのせいで原作にどんな影響が出ているか…
もし歪みがあって幽助にもしもの事があったら?
あの子に
リクオによく似たあの子に
幽助くんにもしもの事があったら?
『…良いですよ』
「桃花?」
{本当か!?}
『幽助くんが心配だから
今回だけ、サポート役としてなら…
でも顔を隠すつもりなので私の事は他言無用で』
{分かった!
是非よろしく頼む}
すぐに案内役を寄越すと言ってコエンマは通信を切った
元のチャンネルに戻ったテレビを消して幻海は桃花に向き直る
「よかったのかい?
嫌だったんだろう」
『うん…
でも幽助くんが心配だから
私より弱いし』
いつからだったか桃花は幽助を特別視する様になった
そう、桃花と幽助を修行の一環で戦わせた頃ぐらいから
それから桃花は幻海の修行には口出ししないものの、それ以外での生活において幽助を甘やかして猫可愛がりする様になった
幽助を通して誰かを見ているという事に気付いた幻海だったが、笑顔が増えて前よりも明るくなった桃花に下手に口出しして良いものか分からず結局口を噤んだ
だがその選択のせいで桃花は今、危険な場所に向かう事になった
後悔がないとは言えなかったが、幻海は静かに桃花を見据える
「…あんたが決めた事なら好きにすればいい
だが無茶はするんじゃないよ
必ずここに帰ってくるんだ」
『うん…
ありがとう、お婆ちゃん
行ってきます!』
2018/03/01
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