狐を被る〜or小説

□第4話
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*門下生選考会*




「桃花、手伝ってくれないかい?」


そう言って渡されたのは小さな白い紙と封筒

小さな封筒の中に紙を入れれば良いと言う


「この紙は特別な紙でな
ある一定レベル以上の霊気に触れると赤くなってしまう」

『なら私にはぴったりな仕事だね!』


普段感知出来ないほど霊気を纏わない桃花にこの仕事は適任だった

早速桃花は幻海から紙と封筒を受け取り、作業を始める


『それにしても大量だね
何に使うの?』

「弟子を取ることにしてね
その為の選考会を開くんだ
これはその試験の一つさ」


幻海の言葉に桃花は思わず手を止めて彼女を見やる

先も短いし後継者を育てないとね…と呟く彼女に桃花はこの世界の主人公を思い出す

そうか、弟子になる話が来たんだ…


『…お婆ちゃんにはまだまだ長生きして欲しいな』

「まだ死ぬ気は無いよ」


これは予感だったのかもしれない

桃花はうろ覚えであるこの物語を無意識の内に恐れ、だからこそ声に出して幻海に伝えた

言葉には言霊が宿る

力ある者ほどその言霊の力も強くなる

だからこそ言葉とは大事なもので

想いを伝える手段となる


『ひとりにしないでね…』

「桃花…?」

『お婆ちゃん、約束だよ』


普段頑なに隠し続ける目が露わになり、幻海を映す

何かを感じ取った幻海は笑みをこぼしながら桃花の手を取った


「安心おし
あんたを一人にして死ぬつもりは無いよ」

『お婆ちゃん…』


安心した様に強張っていた表情を綻ばせる桃花に幻海もホッと息を吐く


「ほら、早く済ませるよ
選考会は三日後に行う予定なんだ」

『え!?
わ、わかった
でも急だね』

「前々から準備は進めていたんだがこればっかりは手が足りなくてね」


山の様にある紙と小さな封筒を見て桃花も納得する

作業を進める二人

夕方には全ての紙を封筒に入れ終わった


『他に手伝う事ってある?』

「そうだね…
人数が居れば三次試験の時にふるいにかけるつもりだ
試験に落ちた者達の回収を頼みたい」

『三次試験って何するの?』

「魔性の森を通り抜けさせる」


魔性の森

それは磁石もきかない未開の領域

自然の罠や妖魔の類の住処にもなっており、迷ったら最後、普通の人間は無事生きて出る事は出来ない


「まぁあんたには意味を成さなかったがね…」


桃花も修行のためにあの森に入った

だが敵意に反応して自動で動く尾が襲い掛かってくる妖魔や獣を全て薙ぎ倒した

霊感能力も高い桃花は迷う事なく、森を抜けた


『あぁ、あの森ね
うん、全然良いよ
でもあそこってそんなに難しいの?』


ふるいになる?と尋ねる桃花に幻海は苦笑いをこぼしたのだった




2018/02/27

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