狐を被る〜or小説
□第2話
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*コエンマとの出会い*
あれから一週間経った
桃花は幻海の元で心健やかに生活していた
『お婆ちゃん!』
「どうしたんだい桃花」
あれから桃花は幻海に懐いていた
元々両親も肉親も居なかった桃花には元の世界でも頼れる存在が居なかった
けれども見ず知らずの怪しい自分の世話をしてくれて、突拍子の無い話も黙って聞いてくれた幻海
そして弱り切って居た自身に手を差し伸べてくれた
懐く理由には十分過ぎるほど
一方、幻海も強過ぎる霊力と妖力をコントロールするために厳しい修行を強いたのに、半泣きになりながらも弱音を吐かずに喰らい付いて懸命に励む桃花を見て心許していた
最初の日以外は弱音を吐かず、幻海には明るく振る舞っている桃花が夜な夜な一人で泣いているのを知っていた
ただの一般人
普通の少女だった
なのにいきなり妖怪の親玉になってしまい、そしてまた知らぬ場所に放り出され、強過ぎる力を持ってしまった桃花を幻海も不憫に思っていた
自分には心許して懐いてくる少女を幻海は次第に孫の様に可愛がっていた
『霊丸撃てるようになったんだよ!』
そう言って大岩に霊丸を放つ桃花
撃ち砕かれて飛んできた岩を黒い尾が更に砕いた
「あんたのそれ便利だねぇ」
『そうかな?
でもこれは私じゃなくて羽衣狐の能力だから』
羽衣狐の能力
攻防一体な強靭な尾が桃花にはまだ残っていた
肉体が己のものだった故に羽衣狐の能力は無くなったと思っていた桃花は幻海との修行で無意識に出した尾に驚愕したのはいい思い出
羽衣狐のものとは毛色が違うが、能力や装備はそのまま一緒な事も確認していた
尾だけで身を守るなら十分過ぎる程のものだが、桃花はこの尾は自身の能力ではなく羽衣狐の能力だからと割り切り、自身の力で身を守る技術を身に付けようと修行に励んでいた
2018/02/25
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