狐を被る〜or小説

□第3話
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「キミは妖怪が見えるんだね」


なんとも都合良く空いていたボックス席に座り、お互い注文して店員が離れたのを見計らい蔵馬が尋ねる

疑問符を付けずに問い掛けてきた蔵馬に桃花はどうしようかと必死に頭を働かせる


『そういうあなたも見えるというか…
退治屋みたいな事をしているようですね』

「…まぁね
見えると絡まれるから必然的にね」

『私も同じです
なので師範に身を守る術をご教授頂いているところで…
先程は本当に興味本位だったのでお邪魔するつもりはなかったんです
だからお詫びとかそういうの気にしないで頂けたら嬉しいんですが…』

「女性の服を台無しにしてしまったのにそうはいきませんよ」


しつこい…

この人そんな気遣いするような人だったっけ?

身内贔屓はしていたけど基本は冷酷だという設定があった様な…

うる覚えの記憶に自信が無い桃花は目の前の人物の対処に困った


『この後用事もありますし
本当に気にしないで欲しいんですが…』

「そういえば自己紹介がまだでしたね
南野秀一といいます」


無視…

しかも人間名だったっけ?

そっち名乗るんだ…

桃花は蔵馬の態度に唖然としながらも落ち着こうと心掛けるが、自分も名乗らなくてはいけないことに気付く

主人公組に名乗るのやだなぁ…

でも名乗らないといけないよね


『山吹 桃花と申します』


ごめんなさい山吹乙女

あなたの名前借りるね


「山吹さんですね
よろしくお願いします」


そう言って微笑む蔵馬は薔薇の花が大層似合うであろう程の美しさで

ボックス席でなければ店の中の客全員の視線を奪っていただろう

だが桃花にとっては獲物を狩ろうとする獣の舌舐めずりにしか見えず

余計に緊張を誘い顔を強張らせた

早く帰りたい…


「この後用事があると言っていましたが、誰かと待ち合わせですか?」

『いえ、誰かと約束してる訳では…』


そこでハッとした桃花は思わず口を噤むがもう遅い


「じゃあ急ぎって訳でもないですよね」


ニコニコと上機嫌に笑う蔵馬に桃花は墓穴を掘ったと自覚する

この人(妖怪?)は一体私をどうしたいんだ…




2018/02/26

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