青エク/治癒姫

□歴代最強の聖騎士
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初めて会ったのはメフィストのヤローに報告書を出しに行った時だった
窓越しに見かけた彼女は悪魔達と戯れていて、とても危険だと思った
だから声を掛けてみれば、とても不思議な女の子だった
長い前髪のせいで顔は見えないが、大人しそうな子だった
だがその足元には魍魎と小鬼と緑男が居る


「…お嬢ちゃんは悪魔が見えてるのか?
楽しくお喋りしているように見えたが…」


早く引き離さないと危ない
そう思って言ったのだが、彼女はふふ…と笑みをこぼした


『…神父様
彼らは確かに総称としては悪魔と呼ばれていますが、本当の悪魔は彼らのような可愛い子達ではなく、人の心にあると思いませんか?
人の心に巣食う悪魔程恐ろしいものはありません』


一瞬何を言われているのか分からなかった
けれども大人しそうな子だと思っていたのは間違いだと気付く

この子は中々に癖の強い子のようだ


「彩乃、確かにお前が言う通り、人の方がそこらの悪魔よりもよっぽど悪魔だ
だがな、それでも可愛いそいつらが危険なやつになる時だってある
人間が悪魔に関わらないほうが良いと思うぜ」

『お気遣い感謝します
ですが…わたしは彼らとお友達なんです
だから関わらないなんて出来ません
それに…』


彩乃が一拍置いたその時、夕暮れ時の冷たい風が吹いた
風が彼女の前髪を躍らせ、その拍子に見えた顔

まるで人形のように整った容姿
だが一番目を奪われるのは鮮やかな深紅と蒼のオッドアイ

吸い込まれそうなほどの深い色合いの目に俺は息を呑んだ


『祓魔師だって手騎士の者は悪魔と契約して利用しているのになぜ関わりあうなと言えるんですか?』


祓魔師を知っているのかという疑問が生まれるが、それと同時に彼女の美しい目に影が落ちたのが気になった
風で乱れた髪を手で抑える彼女に深紅の目は見えなくなってしまったが、寂しげに揺れる蒼の瞳は長い髪の隙間から見えた


『悪魔にだって色んな悪魔が居るんです
人間に協力する悪魔も
人間と共存を望む悪魔も
人間と絆を持つ悪魔も
少ないかもしれませんが存在します』


彼女の言葉にメフィストやクロを思い出す
確かにその通りだ


『だからわたしは悪魔だからと嫌煙する気はありません』


寂しげに揺れていた瞳が一度伏せられ、また真っ直ぐ見上げられた

きらきらと煌めく蒼の瞳が
まるで燐が受け継いだサタンの青い炎のような瞳が真っ直ぐと俺を映す


『わたしは悪魔が嫌いじゃない
人に害を為す存在でもある事も理解はしているから祓魔師を否定はしませんが、全ての悪魔を否定するのは間違っています』


強い眼差しに
強い言葉に信念を感じた
それと同時に自分が恥ずかしくなった

燐と雪男を育てているのに
燐を守っているのに
俺は悪魔だからと偏見を持ち、差別をした

溜め息を吐きながら俺は笑みを噛み締める


「…そうだな
確かにお前の言う通りだ
全ての悪魔を否定して良いわけない
はははっ…
そんな当たり前な事を見失っていただなんてあいつらの親失格だな…」


この子はとても強い子なんだろうな
こんな子があいつらの友達になってくれれば心強い
おそらく同い年ぐらいであろう彩乃の頭に手を置いて優しく撫でる


「ありがとうな嬢ちゃん
また会おう」


頭を撫でた時に小さく髪を掻き分けてその見事なまでの綺麗な瞳を見つめた

また会いたい

そう強く思いながら俺はあいつらが待つ修道院へと帰る







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2017/05/04

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