求愛の宴

□白熊の変化
1ページ/1ページ





ベポが女の子を拾ったという話はすぐさまクルー達の間で広まった

だがベポは頑なに船長であるローと船医のロブスター以外に会わせようとしなかった

島に上陸しているため、航海士として仕事がないことを良いことに医務室に入り浸るベポ

目覚める時を今か今かと待ち望み片時も離れようとしないベポに、流石のローも驚きを隠せない様子だ


「…ベポ、何してんだ?」


眠る少女の傍で、オレンジ色のつなぎに針を通すベポにローは尋ねた


「この子の服を縫ってるの
この子の服ってあのワンピースしかないから着替えがないと困るでしょ?
だからオレのを一枚あげるんだ
あんまり上手じゃないけど、この子が着れるようにサイズ合わせてるんだ」


元々来ていた黒のワンピースとカーディガンしか服がない少女の為に、自分のつなぎを不器用ながらも少女が着れるように縫っているらしい

仲間以外には意外に冷めているベポが、わざわざそこまでする理由がこの少女にはあるのだろうか…

疑問に思うも、ベポが連れて来てから二日経った今でも目覚めない少女に答えは出ないだろうとローは踵を返して医務室から出て行った


「オレとお揃いだね」


不器用ながらも出来上がったつなぎに満足しながら、ベポは少し顔色が良くなった少女に声を掛ける


「キミは何が好きかな?」

「どんな声をしてるのかな?」

「どんな顔をするのかな?」

「オレを怖がっちゃうかな?」


ポツリポツリと

返事が返ってこないと知りながらも話し掛けることを止めないベポ


「キミのお名前は何かな?」

「一緒にご飯が食べたいな」

「一緒に甲板でお昼寝したいな」


窓の外の波の音に掻き消されるほどの小さな寝息しかたてない少女に不安に思うも、それと同時に魘されることもなく眠り続ける彼女に少し笑ってしまうベポ


「どんな夢を見てるのかな?」

「楽しい夢?
オレはね、今日はキャプテンやみんなと一緒に楽しい宴をする夢を見たんだ」

「キミが目を覚ましたら…
現実になるんだよ?」


少女に何の変化がなくても語り続けるベポ

ふと点滴が少なくなってきてることに気付いたベポは、船医であるローかロブスターに声を掛けなくてはいけない

彼女を一人にするのが不安で仕方ない

けれども自分では点滴をどうにかすることは出来ない


「キミを一人にしたくないんだけど…
でも、すぐ戻るから
待っててね」


そう言って医務室から出て行ったベポ

扉が閉まった音に

少女のまぶたがゆっくりと開かれた





管理人へのやる気スイッチ

2017/04/07

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ