満開の桜を

□いざ出陣
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小鳥の鳴く声がする。
朝日が部屋に差し込み、どうにも眩しい。
そうだ、私は本丸に来たんだ…。

「んー……」

寝ぼけ眼でセーラー服に腕を通し、顔を洗う。ネクタイを結び、昨日掃除したばかりの台所で料理を作る…も、やはり竃だと普段やる分といろいろなことが違う。

「大丈夫かな、これ………」

昨日、大至急でこんのすけに届けてもらった米を炊きつつ、味噌汁の用意も進める。やはり、日本人の朝食はこれだと思うんだ。
それに、なんたって今日は出陣の日だから。

「おはよう」
「おはようございま…す!?」

ぱっと後ろを振り返ると、驚くことに昨日手伝ってくれた燭台切さん…もとい、燭台切光忠様がいる。
昨日のこともあったし、もう今日は出てこないかと思ったのだけれど…

「何を作ってるんだい?」
「お味噌汁と、ご飯…ですけど」
「へぇ、やり方はわかった?」

こくこくと頷くと隣に立って作りかけの味噌汁を覗き込む。

「どうせならもう一品欲しいところだね…まかせて、これでもこの本丸の料理番をしてたんだ」

腕まくりをするとこんのすけが取り揃えた食材からテキパキと選び、もう一品どころか二品も作ってしまう。
なんだこのひと…?神様…?…刀剣男子は。主夫か。

「ほら、ご飯出来てるんじゃない?食べようよ」
「えっ、い、一緒に…?」
「僕は食べちゃだめなのかい?」
「そんなことないですけど!!」

そう言うと待ってました、というように器に盛り付け始め…なぜか今、こうして小さなちゃぶ台を二人で囲んでいる。
誰かと食事を共にするなんて、初めてだ…。

「うん、美味しいよ」
「美味しいです」

昨日綺麗にしたばかりの部屋で、朝の澄んだ空気を吸いながら食事をとる。とはいえ、庭初めてまだ殺風景なものだからなんとも寂しい。

「あの桜の木、どうにかなりませんかねぇ…」
「なりますぞ!主様!」

呼ばれて飛び出てなんとやら。
ちゃぶ台中央に置かれたたくあんをぽりっと齧りながらふふんとはなを鳴らすこんのすけ。
いったいいつからそんなキャラになったんだろうか。あと狐ってたくあん食べて大丈夫?
ところで誰も突っ込まないが神様と二人でちゃぶ台を囲むってすごいことだと思う。
こんのすけのやけに自信満々といった体を眺めながらふと思った。
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