満開の桜を

□黒本丸へ
1ページ/5ページ

「黒本丸の救出?」

目の前に座る政府の役人がコクリと頷く。
ここは審神者育成学校の応接間。何もやらかしたりはしていないはずなのに突然こんな場所に呼ばれたから何かと思えば、突然入ってきた細身の男性は苦虫を噛み潰したような顔で告げる。

「えぇ、この学園で稀に見る高成績を叩き出した貴方にしかできないことなのです」
「……学生に頼るなんて、時の政府も追い込まれてるんですね」

そう言われれば居心地が悪いのか、ますます申し訳ないといった様子の男性__本田さんといったか__。
私がいじめてるみたいになるじゃないか。

「いえ、引き受けますよ」
「ほ、本当ですか!?」

こうして頼ってくださった方を無下にするわけにもいかず仕方なしに引き受ける。
…それに本田さん今にも胃痛で死んでしまいそうな顔してるし。お気の毒に。

「それで、ただ救出というわけでもないのでしょう」
「えぇ、実は黒本丸ではないかと危惧されている本丸があるのですが……」

そう言ってことのあらましをぽつぽつと話し始める本田さん。
どうやら少し前から報告が途絶え、演練にも出ていた形跡がない。それなりにレベルも高かったため心配した政府が偵察にこんのすけを出したも帰ってきていないという。

「なるほど…演練に出ていないだけならばともかく、あの管狐が帰ってきていないというと…」

確かに、あの管狐が仕事を放棄するようなことは考えにくい。向かった本丸で何があったのか。

「とはいえ、まだ黒本丸と決まったわけではありません…ですから」
「怪しまれることのすくない学生に任務を、ということですよね」

その通りです。と硬い顔で頷く本田さん。どうでもいいけどこの人胃とか大丈夫なのだろうか。心配だ。

「向こうの本丸での行動は全て貴方に任せます。最悪の場合……」

なるほど、これは一種の人身御供だ。
向こうで何があろうと、都合の悪いことは学生の勝手な行動で済まされる。

「なるほど、わかりましたお任せください」

そろそろこの退屈な学園生活も飽きていた頃だ。これから始まるであろう本丸での生活にドクリと心臓が高鳴る。

「必ずや、その黒本丸を立て直してみせましょう」

にっこりと笑ってその場を後にした。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ