Re:αメンバーの日常

SS吐き溜めの掲示板ですん。
CP小説、カプ無し小説
どれでも可です。

[レス書込]

02/20(Tue) 18:55
明星の誕生祝い
あいか

左目の奥の方で、赤い、刺々しい花が咲いている。
私を度々苛む偏頭痛だ。
気分転換のためアトリエに向かっていた。暗いから、多分、夜。
図書室の仕掛けを作動させて、地下へ降り、共有スペースへ。足元が水面のように揺れる。
扉を開けると先客がいた。
「明星さん。こんばんは」
「ん……」
千秋くん。温かい灰色から、花が咲くように桃色に染まる声。一輪のバラのような、無彩色の青年。
「明星さんも今日はこっちに泊まるの?」
「……」
「え、えっと……あ、ココア飲む?」
「…決めてない……」
「え? あぁ、さっきの答えか…」
「…ココア、飲みたい」
「あ、はい……相当ぼんやりしてるな、これ…」
千秋くんは何か呟いてキッチンへ行った。私はソファーに向かおうとしたけど、床がさっきから波立っていて、壁に手を置いたまま動けなくなってしまった。気持ち悪い。座りたいけど、足の感覚がおかしい。
大きな波が来て、ついに私は倒れそうになった。
「うわっ! 大丈夫?」
千秋くんが間一髪で受け止めてくれたから、平気だったけど。
あぁ、お花の匂いがする。
「ごめん…」
「いいよ。っていうか、すごいクマだね」
千秋くんは私を軽々と横抱きにして、ソファーに運んだ。
「何日寝てないの?」
「……分からない」
「もう……すごい細いし、ご飯も食べてなさそうだね」
千秋くんが何処かへ行こうとするから、咄嗟に袖をつまんだ。
「ここにいて……千秋くんの声が、聞きたい」
千秋くんの色が、温もりが無いと、何て言うか、嫌だ。すごく嫌。
「…分かった」
千秋くんは少し驚いたみたいだったけど、膝をついて私の視点に合わせてくれた。ついでに、私が袖を摘まんでた手をそっと握ってくれる。温かいなぁ。
「ありがと…」
「ううん……明星さんはどうして体調崩してまで、絵を描いてるの?」
しばらく悩んでから、用意されていたかのように、言葉はポロポロ転がり出る。
「私は……描き続けなきゃ、だから…」
「それは、どうして?」
「……私は、おかしな子だから……認めてもらうには、画家でいなきゃいけない…」
私がずっと思ってたこと。他人から理解されないことを、異端ではなく才能なんだということを証明し続けなくてはならないということ。
「なるほど…明星さんはそういう風に考えてるんだね」
瞼が重い。視界は灰色と桃色で埋め尽くされてる。千秋くんの声は、安心する。
「……うまく描けないときも、何回も、何日も描いてると、いつの間にか、描けるようになるの…」
「ずっと描いてるんだね」
「ん……私は、絵を描いてなきゃ……生きていけない」
「うん」
頭は回らないのに、言葉だけが段々一人歩きしていく。
「でも、今は……描いても、描いても、描きたいものが、描けない……そのうち、描きたいものが、分かんなくなっちゃった」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。言語化して、感情が整理されて、もやもやした焦燥ははっきりと形を持つ痛みになった。
「それは…苦しいね」
千秋くんが頷く。それだけで、胸の痛みが緩む。肯定してくれるだけで良い。他の人は、中々してくれないから。
「苦しい……でも、描きたい」
胸はまだ痛いけど、心から、そう言えた。
まだ描きたい。明日からも、ずっと。
「応援するよ」
意識が遠退いてく。くぐもってく。千秋くんが頷いてくれてるのに。
「ここの……皆は、こんな私でも、受け入れて、くれる……認めてくれる…」
「うん…」
千秋くんが握っていない方の手で、私の頭をそっと撫でた。
「すごく……嬉しいの…」
「そっか。僕も明星さんの気持ち、分かる気がする」
温かい。瞼は完全に閉じきっていた。
「千秋くん……あのね」
「うん、なに?」
私は最後に何て言ったのか、記憶に残ってない。


「___大好き」
白髪の少女は、微睡みながらそう言い残して、それから心地良さそうに寝息を立て始めた。
「それは、反則だよ……」
ピンクの髪の青年は赤い顔を伏せた。
絵の具の独特な匂いが鼻につく。画家の匂い。彼女の、匂い。
顔をあげると、子供のような寝顔。
もう一度彼女の頭を撫でて、ささやく。
「次は、僕も大好きだよって答えるまで、起きててね」
それから青年は、恥ずかしさで悶え始めた。

PC
[削除]

02/20(Tue) 19:07
後日譚的な
あいか


「千秋くん、昨日はごめん。それと、ありがと……」
「い、いや、大丈夫だよ! 全然気にしないで!」
「顔、真っ赤だよ? …私、昨日、変なこと言った?」
「えっ!? い、いや、変なことっていうか、その……」
「実は私、最後の方、記憶無くて……」
「えっ……そ、そうなんだ…」
「何か言ってた?」
「うーんとね……………秘密」
バラはいたずらっぽく、微笑んだ。

PC
[削除]


[戻る]
[レス書込]
[TOPへ]



©フォレストページ