Re:αメンバーの日常

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03/15(Wed) 14:21
「ちょっとした暇つぶし」
らんまる!

その日男は悩んでいた。
凄く久しく、*.バレンタインチョコ*.というものを貰った。
しかも、男にだ。しかし彼は如何せん嫌悪感はなかった。
そう、ただ、何をお返しにあげるかを悩んでいた。
頬を彼の目のように少し紅く染めた青年は、
どうやら男を嫌いのような素振りをしていた。
傍から見ていれば、きっと、
それは素直ではないからだということが分かるだろうが、
男はそんな事は考えもつかない。
自分を嫌っているはずの彼が、何故自分にこんなものを?
灯台もと暗しとはこの事で、男は正解を大前提として捨てていた。
そう、だから彼は悩んでいた。
何をお返しにするか。
可愛らしい袋に詰められた、丸い球体。
ブランデーやラムを混ぜて、甘さは控えめ。
きっと、男の好みに合わせたものだ。
そこまで気遣われているのは男にもわかった。
しかし、それが何故か、は男は理解しえなかった。
尚且つ、彼の好き嫌い、体質、それらを男が知るはずが無い。
お返しをしようにも、八方塞がりだった。
幸い、あげた本人はアトリエ近くの自宅に、
兄と会うために今は帰っている。
用意するなら、今なのだ。
勿論、此処に着くまでの道中、
お返しの菓子を見てみたが、
流石に売っているはずもなく、
どこも売り切れの文字しかなかった。
男は額を掻いて、まゆを下げた。
暫くして、カタリと物音がした。
とたたと軽快な靴音がして、甲高い声が響く。
「たっだいまにゃー!りくるちゃんのお帰りだにょー!」
男は顔を上げ、声の主に目を向ける。
黒い三つ編みを言ったお下げの女。
成人していると見受けられるが、姿格好はセーラー服。
「あぁ、お帰り」
男はそう上の空で返した。すると、彼女は面白くなさそうに
むすっとするが、周りを見て大体を察し、にたりと笑って
「何なにぃー?もしかして、!」
そう男の傍に駆け寄り、面白そうに男をじっーとみる。
男は今まで考えていたことをすべて話した。
それを聞いた彼女は、ますます面白そうに、
「そんな時はこれだよ!」
と、何処から出したのか、見慣れない瓶を取り出した。
ちゃぷんっと中の液体が揺れ、きらきらゆらゆらと揺蕩う。
「これは、何でもいい感じにしちゃうお薬にゃ!
これを、お菓子にかけちゃえばいいにゃ!」
女はそう言った。如何にも怪しいとは男もわかっているが、
人がいい彼は疑うことは無かった。
「近くに旱くんの好きなお菓子屋さんがあったにょ!
そこのお菓子にするといいんじゃないかにゃ?」
女はそう助言し 場所を教えた後、何事もなく嵐のように立ち去った。
男ははてなマークを一つ浮かべたが、
折角の助言を無視するわけにはいかないと、
急いでそのお菓子屋を探すことにした。

__________
その日、男は悩んでいた。
無愛想に一ヶ月前、チョコを渡し、
精一杯のアピールをしたつもりだった。
しかし、それが伝わっているのか、しかも、自分は男で、
下手すればあの笑顔の下に、嫌悪が隠れていたかもしれない。
そう思うと、何だかそうにしか思えなくなっていく。
だから、あの人が寄るだろうアトリエには居たくはなかった。
そう、だから自宅に帰ってきたそれだけだった。
すると、うざったらしい帰国したばっかりの兄貴が
興味津々そうに男を見る。察しはいいのか、
何かあったかと聞いてくる。相当のブラコンであるのは確か。
男は身内には勝てないのか、素直に赤裸々に話した。
すると、男の兄はただの考えすぎだと笑った。
男は少し救われた気もした。やはり身内の言葉が一番心にくる。
素直になるのが一番だと諭され、
少しむかついた様子だったが、スッキリした表情。
男は小さく礼を言って、アトリエへ戻る。
引き合せる方も大変だというわけか。

______
男は晴れ晴れとしていた。
その日、男はお返しの菓子を渡した。
男は男に薄らと笑った。


後日、女が暫く二人に避けられ続けるのは言うまでもない。
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