夜うさ
□募る想い
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次の日、いつものようにリビングに行き朝ごはんを食べる。頭の中は昨日のメールの事しかなくて。ぼーっとしているからなのか納豆にソースをかけたり、何もない場所に箸をつけたりと心ここに在らずだった。
ーーいけない、このままだと皆に余計な心配かけさせちゃう。
そう思うと余計心にズシリと重しがのしかかった。みんなに悩んでる事バレて『気にしないで』って言ったら逆効果だし…。ーーどうやら、自分は思っている以上に夜天くんが恋しいらしい。
恋人らしい事をしたのはいつだったか。確か付き合ったその日に、一緒に帰った程度…。薄暗くなった空の下、手を繋ぎながらゆったりと歩いたのを鮮明に覚えている。恥ずかしさと嬉しさがこみ上げてきて、幸せだった。
今ももちろん、夜天くんと付き合えていること自体が幸せなのだけれど、これ以上幸せになりたいと思うのは、ずるいのかな…。
ーーはあ、と小さくため息をついた。
美「そういえば昨日夜天くんに新しく出たCDにサイン貰っちゃった♪」
ま「へえ、そうなんだ。よく貰えたね」
美「この愛野美奈子にかかれば楽勝よ♪」
美奈子ちゃんとまこちゃんの話に耳を疑った。夜天くん、美奈子ちゃんには会うの…?ドクンドクンと耳の横でなっているのかと思うくらい心音がうるさい。嫌なことしか想像できない。これ以上疑いたくないのに。やめて、やめてよ。
―――あたしには会いに来てくれないのに。
う「っ、やだ…!!」
ガタンと勢い良く立ち上がってしまった。周りのみんなは驚いたような目であたしを見ている。それを見て、はっと我に帰った。なんて醜いんだろうと、自分が嫌になる。ごめんなさい、と呟いて教室から逃げるように出た。
う「っ、ふ、…っ」
こんな想いをしたくて、結ばれたんじゃない。こうやって墓穴を掘っているのは自分だ。夜天くんは忙しいって、わかっているのに。待っていられないなんて、自分はなんて最低なんだろう。こんなの、夜天くんにふさわしいわけがない。ぼたぼたと溢れる涙を必死に拭いながら屋上で独り涙を堪えた。