ライツうさ

□忍び寄るお邪魔虫
1ページ/1ページ

う「きゃあああああああ!!!」

うさぎの甲高い叫び声が、高層マンションの一室に響き渡る。


その声を聞いて、何事かと部屋で仕事をしていた星野達が慌ててリビングへ集まった。


リビングにはクッションを力強く抱き締めぶるぶる震えてる彼女が居た。


大「うさぎさん!どうしたんですか!?」

う「あ、あそこに・・・。」


うさぎは星野の胸に顔を埋め震える指でTVの方を差している。
TVから流れてるものはホラーではなく、スリーライツがゲスト出演しているバラエティ番組。
特に悲鳴をあげる場面などない。


星「おい、一体何があったんだよ?」

う「て…TVの、後ろ…」

夜「後ろ?」


夜天がTVの後ろを覗きこむと、カサカサカサと不気味な音が聴こえてきそうな勢いで黒い悪魔が夜天に向かってきた。


夜「わあああぁぁぁ!!」


滅多に訊かない仲間の悲鳴に星野と大気の肩が揺れる。
すると腰を抜かした夜天の前からゴキブリが何食わぬ顔で出てきた。


大「こ、これは…」

星「ゴキブリだな」

う「なんでゴキブリがマンションの最上階に出てくんのよ!!」

夜「そうだよ!あいつらは下の階しか出ないんじゃないの!?」


星野の周りでワーワーキャーキャー言う二人に星野は大気に助け船を求める。

大「確かに上の階は出ないと言われてますが、人が連れてくる事もあるみたいですよ。引越しの際卵の状態で連れてそれが孵化したり、エレベーターで上に来ることも…。」

星「まぁとにかく退治を……。」



そう言った星野は履いていたスリッパを手に取り構え、勢いよく降り下ろそうとしたのを3人に押さえ付けられる。


星「な、何すんだよ!?;」

う「あんた、それで倒してその後どうするつもり!!」

夜「そうだよ!壁にGの痕跡が残るじゃん!」

大「それに、そのスリッパが履けなくなるじゃないですか!衛生的にもよろしくありません!!」

星「いや、拭けばいいじゃん…;」


「よくないわよ!」
「よくありません!」
「よくない!」


仕方なく潰すのは止めて他の方法を考える。その間ゴキブリはその場でじっと待ち構えている。


う「大気さん、殺虫剤はないの?」

大「えぇ、あまり虫に出くわしたことないので、そう言った物は…。」

星「やっぱ潰すしかねぇじゃん!」

夜「星野は黙ってて!」

星「なんで!?;」


普段声を荒らげない夜天に星野はたじたじ…。その様子から夜天もゴキブリは苦手な様だ。


う「じゃあさぁ、外に出しちゃえば?」

夜「どうやって?」

う「窓に誘導するとか?」

大「上手くいく気がしませんが…;」


とりあえず試す事にした4人は、夜天が窓を開け、大気が団扇を持ってゴキブリに近づく。そして、大気は思いっきりゴキブリに風を送った。
するとゴキブリは大気の顔めがけて飛んできた。


大「うわああああぁ!!」

う「やぁああああ!!」

叫び声を上げながら、体中を鳥肌で覆いながら格闘すること10分。

・・・大気は力尽きた。


夜「大気大丈夫?;」

大「こ、これは…時間が掛かります…。」

夜「中々しつこいね。」

う「きっとあいつにはカオスがとりついてるのよ…。」

大「そうですね…。」

星「…それ、本気で言ってる?;」


闘い続けて疲れ切った大気と飛んだり動いたりしただけで叫び続けた夜天とうさぎは、ソファでぐったりしていた。


星「そんなになるならさっさと殺っちゃえばいいだろ?;」

う「じゃあ潰さずに何とかしてよ!」

星「むちゃくちゃな;…なら袋に入れて縛ればいいだろ」


そう言いながらキッチンに行く星野を夜天が止める。


夜「星野、バカなの?ゴキブリの生命力知ってるでしょ?そんな事しても袋の中でずっとガサガサ動き回るんだよ?僕らの精神削る気?」

星「んな女みたいな事ばっか言ってんなよ!…げっ!;」

ヒ「今は女よ!」


自分の後ろで女々しい事言ってる夜天に文句を言い振り返るといつの間にかヒーラーの姿になってる夜天。


星「いつ代わったんだよ!;ってか、そんな事でヒーラーになるな!;…もう大気も言ってくれ……よ?;」

メ「どうかしましたか?」


ソファの上でうさぎの肩に手を置いていたのは大気ではなく、メイカー。


星「…大気…;」
頭を抱えどうしようか一人考える星野。
殺虫剤もない、袋に捕らえるのもダメ、潰すのもダメ。
ーー残るは……。


メ「きゃあああああ!!」

う「いやぁぁぁ、メイカーー!」


二人の叫び声に顔をあげるとメイカーの顔にゴキブリが…。


ヒ「メイカー!」


ヒーラーがメイカーに近づくとゴキブリはメイカーの顔から飛び立つ。


メ「スタージェントル…」


「「「ちょっと、待ったーー!」」」


徐にスターエールを握り締め、必殺技を放とうとしたメイカーを押さえつける。


メ「何するの!あいつだけは許さない!」

う「こ、こんな所でそんな技使ったら…」

星「真夏ならまだしも、冬に風穴は耐えられねぇ!」

ヒ「バカ!そう言う問題じゃないわよ!」


冷静さを失ったメイカーを取り押さえるのには限界だった。
星野は残った退治方法を出来れば使いたくなかったが、部屋に風穴が開くよりはマシと考え、行動を起こした。

メイカーから離れ一直線にゴキブリに向い、手を伸ばした。


う「せ、星野!」

ヒ「星野、あなたまさか!」


二人の声も無視して星野はゴキブリを素早く掴み、開いている窓からゴキブリを投げ捨てた。

パンパン、と手を叩き満足気にこちらに近付いてくる星野に3人は後退りする。


星「おい、お前らどうしたんだよ?」


う「え、いや、…その」

ヒ「こ、来ないで!」

メ「ーー不潔。」

星「酷くねぇか?;…せっかく俺が、」


「「「いいから、お風呂入ってきて!」」」



半ば無理矢理お風呂に入らされ、綺麗にした挙げ句、その日はうさぎに触ることを二人から許しをもらえなかった星野であった。





END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ