大うさ

□おはようのキス
1ページ/1ページ

昨日早く寝たからか、いつもより早く目が覚めた。
パジャマから私服に着替えて部屋から出ると、まだ誰も起きていない。


う「よーし、たまには朝ごはんでも作ってあげよ♪」


冷蔵庫を開けると、きちんと整頓された食材が分かりやすい様に並べてある。
ーー流石大気さん。
うさぎが選んだのは、玉子とウインナー、そしてインスタントのコーンスープ。

う「これぐらいなら、あたしにも出来るもんね♪」


作り終えると星野と夜天がうさぎに挨拶をして、顔を洗いに洗面所に向かい、並べられた朝食を覗いた。


夜「ーーこれ、食べれるの?;」

星「だ、大丈夫だろ?;」

う「二人ともひどーい!ちょっと焦げただけだもん!」


並べられた朝食は、黄身がぐちゃぐちゃになり白身が茶色くなっている目玉焼き、焼きすぎで皮が破けたウインナー、スプーンで救うと溶けきれてないコーンスープが顔を出す。
二人は苦笑いしながら、朝食を食べて部屋に戻った。


う「大気さん、遅いな…今日仕事じゃないのかなぁ?」


いつもは誰よりも早く起きて朝食を作ってくれるのに…。


う「大気さん、朝ですよぉ」

ドア越しに軽くノックをする。
いつもならノックをすると中から「はい」、と大気の声が聞こえるはずだが、今日は聞こえない。
数回ノックを繰り返すも、声がしない。
どうしたことかと、心配になり「失礼します」と一応声を掛けてドアを開く。

何度か入ったことはあるが、こざっぱりとした部屋は几帳面で真面目な大気らしい性格が良く出ている。
部屋に入ってすぐ左手側にあるベッドに目的の人物はいた。
がっぽりと頭まで布団を被った大気はベッドの中でもぞもぞとしている。


う「たーいーきーさぁん。朝ですよ〜」

大「……ん……うさ、ぎ……さ……ん……」

ベッドの中からくぐもった声が聞こえ、一応起きていると確認ができた。
だが、中々ベッドから出てこない。
それどころか顔すら出さず、布団をより深く被ってしまった。
寒いわけではない、むしろ暑すぎるくらいだ。
今日は冬の割に暖かく、セーターを着ているうさぎもその下は薄着なのだ。


う「大気さん!今日お仕事は?」

大「……今日は、休み、なんです……」

う「え?そうなの?」

大「収録が…ずれたので…今日は……やすみ…で……す…。」


そういうと、再び寝息が聞こえる。
昨日はかなり遅くに帰ってきていたが、恐らくそれも関係して、こんなに疲れているんだろう。
仕事、学業、家事までこなしているのだ、疲れない訳がない。
ここ数日、かなり遅く帰ってきていたし、今日はこのまま寝かせておいてあげよう。
そう思って、「おやすみなさい」、と一声かけて出ていこうとした、が。

大「……んっ……うさ、ぎさん……」

う「どうしたの?」

再びベッドの端へ膝を落とし、声のする辺りに顔を近づけると、不意に中から腕が飛び出してきた。
「きゃっ!」と思わず声が出てしまい、気づけば生暖かいものに包まれている感覚がした。
驚きで閉じてしまった目を開き、ゆっくり顔をあげると、そこには見慣れた顔。


う「た、たた大気さん!?////」

思わず声が裏返ってしまう。
目を大きく見開き、ぱちぱちと瞬きをする。
寝惚けているのか、抱きすくめたまま、寝ぼけた声のまま「うさぎさん」と小さく呟いた。
心臓がうるさく高鳴るのを抑えるのに必死だが、そう思ってもますます高まるのを抑えられない。


う(このままだと大気さんに聞こえちゃう……////)

セーター越しに伝わる大気の体温はとても熱い。
熱に侵されたみたいに熱い。
抱き締められた身体は熱を帯びて、思わず大気のパジャマを握りしめていた。
頭の上からすぅすぅ、と寝息が聞こえてきて、一人でドキドキしている自分がバカらしく思えてしまう。


う「もう……せっかくご飯作ったのに……」

一人呟くと、握っていた手を離し、今度は大気の身体に手を伸ばす。
いつも帰ってきた時とかに抱き合ってはいるが、薄いパジャマ越しだととても細く、けどしっかり筋肉がついているのがわかる。
無駄な脂肪のついていないすっきりとした体型に羨ましいと思ってしまう。
こうして抱き締めてみると男らしい部分が見えてくる。
改めて自分は彼に恋をしているのだ、と実感が湧いてくる。
胸の中に顔を埋め、うさぎもそっと目を瞑る。



数時間後

胸の中に温かいものを感じた大気は心地よい気分のまま目を覚ました。
目の前に飛び込んできたのは見慣れた黄金の髪。


大「……え……な、なっ……////」

なぜ、ここに彼女がいるのか。
いつも彼女専用の部屋で寝ているはずの彼女がどうしてここで、しかも自分の腕の中で寝ているのだろう。
身動きを取ろうとするが、いつのまにか腕枕をしていたらしい腕は動くに動かせない。
良く見てみれば、うさぎはパジャマではなく私服だ。
ベッドの端に置いてある時計に目をやれば、時間は昼過ぎを指しており、遅刻だ、と思ったが、すぐに考え直した。
そういえば、収録がずれて今日は休みになったんだ。
加えてここ連日の仕事で疲れがたまっていたのだろう。
それにしても、どうしてここにうさぎがいるのかまでは全くわからない。


大「う、うさぎさん……?」

恐る恐る声をかけてみるが、どうやらすっかり寝入ってしまっているらしい。
セーター越しに伝わる体温にどくん、と心臓が高鳴るのを感じる、と同時に男の生理現象まで起きた。


大「ど、どうしたらいいんでしょう……」

今まで女性とこうして寝た経験なんてない訳じゃない。
うさぎとは何回か寝たことはあった。
でも、ここ最近はなかった。
結局、悶々とするもどうすべきかわからない。


大「…そういえば、今日休みだってこと伝えてなかったですね……」

そう思うと、ここに彼女がいるのはもしかして自分を起こしに来て、そのまま一緒に寝てしまったのではないだろうか。
だが、仮にそうだとしても、彼女が自らベッドの中まで入るとは思えない。
考えてみればみるほど、よりわからなくなってしまう。


大「……寝ていてもかわいいですね……」

ーー本音だ。
思わず溢れてしまったのは、素直な彼女の寝顔へ対しての感想だ。
整った顔立ちは寝顔でも整っており、いとおしさが溢れてくる。
抱き締めていた腕に再び力を込め、より近くに彼女を感じる。
甘い香りが鼻孔をくすぐり、くらっとしてしまいそうになるのを抑え、軽く髪をかき揚げる。
綺麗で色白のまっさらな額に、そっと唇をつける。
いとおしいものを壊さないように、愛しているものへ感謝の意を込めて、軽く。


う「……ん……」

小さくみじろぐうさぎにビックリした大気は思わず身体を離そうとするが、思い止まる。
胸の中に埋まっている顔を手で抑え、無防備に開いている唇に、そっと自分の唇を重ねる。

時が止まったかのように、ゆっくりと、優しく、寝ている彼女を起こさないように。

思わず息が零れそうになるのを抑えて、角度を変えて、二回、キスをした。


大「……うさぎさん、好きですよ」

う「…私もです」

大「っ!?う、うさぎさん!?起きてたんですか!?」

突然聞こえた声に思わず身体を離してしまうが、すんでのところで食い止められた。
ベッドの中で抱き締めたまま、うさぎは嬉しそうにえへへ、と笑う。
首まで真っ赤になった大気は「うさぎさん!///」と思わず叱責してしまう。


大「い、いつから起きてたんですか?」

う「う〜ん、大気さんがあたしのおでこにキスした辺り?」

大「最初からじゃないですか!///」

う「起こしに来たのに、今日が休みだって教えてくれなかった大気さんもですよ」

大「あ……それは、すみません……昨日伝え忘れてしまって」

う「いいの、こうして一緒に寝れたから」

ベッドから身体を起こしたうさぎは、ねっ、と可愛らしく笑う。


う「今日お休みならどこか行かない?」

大「そうですね」

大気もベッドから起き上がると、「その前に…」、と立っていたうさぎは大気の横に座る。

大「うさぎさん?」

う「あ、あの、あたしもしていい?……その、おはようのキス//////」

その言葉にたじろいだ大気はぶんぶんと首を振るも、「わ、わかりました」と呟く。

窓から差し込む日の光越しに、二人の重なった影が部屋に照らされる。
キスをして、頭と頭をこつんと、くっつけて、小さく二人して笑う。



う「おはよう、大気さん///」

大「おはようございます、うさぎさん」






END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ