夜うさ

□許してあげる
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朝の雀が起床を告げるこの時間、朝が弱い夜天くんは眠っている。
しかも昨日、夜天くんはあたしの部屋にはやってこなかった。
つまりとても疲れていたんだろう。
あたしは星野や大気さんが出てくる前に、こっそりと夜天くんの部屋に忍び込むと、真っ直ぐとベッドで眠っている夜天くんの傍へと抜き足で歩いていった。
 
手に構えているのは先日パパから貰ったコンパクトデジタルカメラだ。
シャッター音が鳴らないように設定済みなので、起こしてしまう心配はない。問題があるとするならばあたしの腕であるが、そこは近代の文明の利器、使用者の腕に左右されずにある程度誰でも上手く撮れる。
 
思ったとおり、夜天くんはぐっすり眠っていた。狸寝入りも警戒したけど、これは間違いなく本当に眠っている。ここ最近よく寝る夜天くんの寝顔は何度も見てきた。だからこそ断言できる。
制服を整えながらゆっくりとしゃがみこんで、あたしはカーテンで閉じられた暗い部屋の中でこっそりとカメラを構えた。

う『……あ、あれ?;』
音は鳴らない、でも確かに画面上ではシャッターは切れている。けれど、映っているのは暗い画面。どうやら照明がないから顔がちゃんと写らなかったらしい。ーーそれなら、とメニューをナイトモードに切り替えて再びカメラを構えてシャッターを切る。すると明るい閃光が一瞬部屋を照らした。思った以上にストロボが効いたせいで焦ったが、どうやら写真はちゃんと撮れたようだ。

う『よしっ!』
小声でガッツポーズをとって、部屋から退出しようと夜天くんから背を向けたとき、布団が動く音と共に腕を掴まれた。
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