星うさ

□彼と一緒に“おはよ”
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彼の寝顔を見るのは、これで何度目だろう…。


初めて彼の寝顔を見たのは彼の部屋に泊まったとき。
その日は芸能の仕事が夕方に終わり、家で寛いでいたあたしを電話で呼び出した彼は、あたしをそのまま家に泊めた。


緊張していてなかなか寝付けず、寝返りを打っていたら、隣で眠る彼の姿が目に入った。
そのとき、なぜか緊張で強張った身体の力がすうっと消えていき、温かく穏やかな気持ちになっていつの間にか眠っていたのだった。
 


安心しきったように眠るその寝顔に言いようのないほどの愛おしさが込み上げてくる。この寝顔を見られるのは、恋人である自分だけの特権。そう思うとすこし照れくさいような、嬉しくも恥ずかしいような気持ちになり、目の前にある彼の逞しい胸元に顔をうずめた。

 
あたしの髪がくすぐったかったのか、彼は少し身じろぎをしたあと、あたしの腰と背中に手を回し、まるで抱き枕を抱きしめるかのような感覚であたしを抱き寄せた。
鼻から思い切り息を吸い込むと、すぐに彼の匂いで満たされる。彼の故郷の香り…金木犀。この匂いがいちばん落ち着く。
大好きな香りと彼の体温に包まれて、あたしは再び目を閉じた。
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