星うさ

□素直になって
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お風呂から出てきて身体はぽかぽか。
大きい長袖Tシャツにハーフパンツ。
ソファにドサッと座ると、ローテーブルの上にある漫画が目に入った。

身体を起こして漫画に手を伸ばす。
パラパラと斜め読み、青春ものか…。
すんなりと入りやすい雰囲気の文章に惹かれて、あたしは最初から読むことにした。


星「…またか;」


ミネラルウォーターのボトルに口をつけながらがお風呂から出てきた星野が言った。
あたしはチラッとそちらを見てまた漫画に視線を戻す。


星「お前なぁ、自分の服着ろよ;」

う「だって脱衣所にあったんだもん」

星「おだんごの服も置いてあったって;」


あたしはお風呂あがり、星野の服を着る。綺麗な身体になって洗いたての星野の服を着るとくすぐったくて落ち着く。
星野にはそれが見つかるたびにあきれられてるけど…。
文句を言いつつ部屋に着る服を取りに行った星野。

アイドルをしていて、忙しくなると中々会えないし、甘えたくても疲れているだろうと、流石のあたしも遠慮してしまう。
だから少しでも星野を感じたくて、つい星野の服に手が伸びる。

服を着て部屋から出てきた星野はあたしの隣に座った。


星「…あのさぁ」

う「…何?」


なんとなくいつもとは違う雰囲気。
あたしは読んでいた本を閉じた。


星「札幌行くことになった」

う「そうなんだ!いいなぁ、あたし北海道行ったことないよ」

星「・・・。」


羨ましがってるあたしと違って俯いてる星野にあたしの頭の中でハテナがとぶ。


う「どうしたの?」

星「1日2日じゃないんだ…。」

う「どれくらい?」

星「1ヶ月。」

う「そっかぁ…頑張ってね」


あたしは単純に返事をしたが、星野にはそれが予想外だったみたい。


星「そんな反応されると思わなかった」

う「どういうのを期待したの?」

星「ーん……あたしさみしい…行かないでせぇや!…とか??(笑)」


あたしの声真似をする星野に、あたしは棒読みでとりあえず期待に応えてみた。


う「さみしいなぁ」

星「…おだんご;」


苦笑いしながら星野は立ち上がった。


星「寝るけど、おだんごは?」

う「これ、もう少し読んでから寝る」

星「ん、おやすみ」


少し不満げな雰囲気を漂わせている。
星野が寝室へ行ったのであたしはリビングの明かりを1段階暗くした。
そして漫画をふたたび開いた。
漫画の続きを読み進めようとしても文字が頭に入ってこない。


う「札幌かぁ…」


思わずもれた、ため息まじりの言葉にはっとした。
あたしは短く息を吐き、漫画をまたテーブルに戻した。

ずっと、離れてるわけじゃない。
期間はたったの1ヶ月。
しばらくソファでボーッとして、あたしは寝ることにした。


隣りの星野を起こさないようにそっとベッドに寝転ぶ。
星野は背を向けている。


星「もう読み終わったのか?」

う「ううん。」


あたしは星野の背中に向かって話す。
寝たと思っていたのに、声がハッキリしている。
星野の背中におでこをくつっけた。

星「どうした?」

う「うん…」


声が直接響いてくる。
低くてやさしい声。
なんだか泣きそう…。


星「やっぱりさみしいんだろ?」


からかい半分の口調に、あたしは「んー…」と曖昧に返した。
星野は「しょうがねぇなぁ」と言って寝返りを打とうとしたので慌てて止めた。


う「そのままでいいから!」

星「俺の顔より背中の方がいいのか」


嫌みっぽく言いながらも、星野は後ろに手を伸ばしあたしの手を見つけるとキュッと握ってきた。
あったかくて、大きい手。


星「子守唄でも歌ってやろうか♪」

う「…いらない」

星「歌には自信あるぞ?」

う「あったり前でしょ!アイドルなんだから」

星「はは、そうだな。俺人気アイドルだもんな♪」

1ヶ月もこんな風にやり取り出来なくなるんだ…。
ちょっと、不安だな…。
星野に近寄ってくる人なんて沢山居るし…。
「行かないで」っと出かかった言葉をグッと飲み込んだ。


星「…なんか欲しいもんある?」

う「…え?」

星「お土産」

う「白い恋人」

星「他は?」

う「夕張メロン」

星「相変わらず食いもんばっかだな(笑)」

う「…うるさいわね////」


星野が居なくても亜美ちゃん達が居るからさみしくないもん・・・。
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