夜うさ

□募る想い
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学校が終わり、帰宅していたときだった。人混みに紛れながらぼうっと歩いていると前の方に見覚えのある後ろ姿を見つけた。あ、と思った瞬間、あたしの足は勝手に走り出していた。どうか、追いついて。あれは、あれは。ぐっ、と涙が出そうになるのを堪えて必死に足を動かす。ねえ、振り向いてよ。ねえ。


う「夜天くん…っ!」


名前を呼んでも、気付いてくれない。もしかして人違い?ううん、そんなことない。間違える筈がない。長い銀白の髪、気だるそうに歩く姿。紛れもない夜天くんだ。
とうとう夜天くんは人混みの中へと進んでいき、見失ってしまった。

会いたい、会いたいよ…。胸がしめつけられるように痛かった。はあ、と息が切れるのを感じながらどこか億劫に時計を見やる。短針は五時を指していて、もう帰らなきゃと思いながらフラフラとその場に崩れ落ちた。


ーーどうして、会えないんだろう。もしあたしが芸能人なら、夜天くんに会えたのかな。そうしたら局の何処かで会えるかもしれないし、芸能人ならではの愚痴も言い合ったりできるのに。
相変わらずメールフォルダにはなにもない。都合よくメールが来るわけでもない。現実なんてこんなものよね、と自嘲気味に笑った。


う「……帰らなきゃ。」

いつまでもこんな道で座り込んでいたら迷惑だ。ホコリのついたスカートをぱん、と手で払ってから歩み始めた。
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