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□雨だれのプレリュード 2
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 梁太郎は司教お抱えのピアニストとなっていた。孤児であり、出生の不確かな者がこれほどの出世をしたのは、前例がないと、一時期ずいぶんと騒がれた。しかし彼の腕はそのような回りの騒音を簡単に黙らせることができる程であった。
 司教はじっとしていない人で、国のあちこちを視察と言う名目で回っていた。その実は音楽を聴くためであったが、功績があるため、口を出す者はいなかった。その旅には、必ず梁太郎を連れて行き、共演させたり、伴奏させたりしていた。彼は梁太郎の音が一番だと考えており、梁太郎の音と合わせれば、音楽が何倍も輝くと感じていたからだ。
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