p5

□雨だれのプレリュード
1ページ/5ページ

 雨がしとしとと降り続く。木陰にうずくまり、蓮は跳ねる滴を睨んでいた。
「どうしたんだい?こんなところで」
ぼろの傘を指し、ほつれたコートを着た男が、蓮に声をかける。黒いコートの襟にかかる金髪が、雨雲で薄暗い中でも光っていた。
「音楽が泣いてしまうよ、おいで」
差し出された手を恐る恐る触ると、冷たかった。

 ぼろの傘は雨が漏ったが、蓮は濡れなかった。そのまま連れられて着いたのは、教会だった。石造りのそれは、荘厳だが優しかった。
「さあ、中は暖かいよ」
そのまま手を引かれ、蓮は教会に入る。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ