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□死にたい直前
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 世界はこんなにも俺を嫌いなのだろうか。
 くだらない嫌がらせだった。楽譜が無くなっていた。中の一枚だけ。特別な楽譜だったわけでもなく、控えだってある。しかしそれはとても悲しかった。
 音楽でさえ、俺を落としめる対象となる。否、音楽だからこそ、成り得る。俺を肯定するものが、俺を否定する。
 その日は泣いてしまった。 

 君がなくした楽譜を持ってきたのは、三日後だった。それはくしゃくしゃによれていたけれど、楽譜としては使えるままだった。君は黙ってそれを差し出すと、悲しそうに顔を歪める。俺は楽譜を受け取ると、君の胸で気が済むまで泣いた。俺を嫌う世界を恨みながら、君を愛する世界を賛美して。 



    終

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