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□釘付け
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「しんどい…」
季節の変わり目に負けて、風邪を引いた。9度近い体温はさすがに体を重くさせる。梁太郎はスポーツ飲料をちびちび飲むと、また、ベッドに倒れた。
熱があるのがしんどい。学校に行けないのがしんどい。音楽を学べないのがしんどい。月森蓮に会えないのがしんどい。
梁太郎は風邪が治るまで、蓮が何を言おうと会わないと宣言したメールを、蓮に送っている。だからどんなに望んでも、会えはしない。
1日で治ると思った風邪も、久しぶりに出た高熱はなかなか引かない。転科や蓮が留学することや、本当にたくさんのことがあって、いよいよ心身ともに参ったのかもしれない。そう思うと、弱い自分が情けない。
枕元のプレイヤーを弄って、音楽をかける。ヴァイオリンの音色が耳を満たした。