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□潜入セヨ!11
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 水族館では、格好のことなど忘れたように月森ははしゃいでいた。目がキラキラと輝いている。そんな月森が嬉しくて、土浦も浮かれていた。
「あ、ほら、ジンベイザメだ」
「大きいな」
透明な壁の向こう側を熱心に眺める月森を見つめて、土浦はそっと肩を抱いた。ピクリと月森が震える。少しだけ、自分側に抱き寄せた。月森の体から力が抜けた。
 人の群れに逆らわないように歩く。もうすぐイルカショーが始まるので、みんな急ぎ足だ。慣れない靴に歩きにくそうな月森の手を握って、二人だけはゆっくり歩いていた。
 一番後ろの席しか空いておらず、しかしちょうどステージの前で、二人並んで座る。月森が息を吐いて力を抜いた。
「足、平気か?」
「ああ」
「ここ、空いててよかったな。よく見えるし、水がかかる心配ないし」
「そうだな」
月森が離れていた土浦の手を握る。嬉しくて土浦は互いの指を絡ませた。
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