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□潜入セヨ!9
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ピアノ椅子に座り、鍵盤を眺める。綺麗だ。ラをひとつ、落とす。
「土浦?」
まだ湯が沸かないのだろう、月森が体半分だけ覗かせる。
「勝手に演奏してる」
「そうか」
またキッチンに引っ込む月森に少し寂しさを感じ、選曲は寂しい曲となった。ショパンの別れの曲。美しい旋律が指先から溢れていく。悲しすぎない寂しさが心地いい。やはりいいピアノは音が違う。
 せっかく二人っきりだというのに、寂しい曲を選ぶと思いながら紅茶をカップに注ぐ。ふと、どうして寂しいと思うんだろうと、月森はかぶりを振った。トレーを持ち上げる。
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