おはなし

□伝えきれない想いを
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銃声、悲鳴、阿鼻叫喚

火薬と血の匂い

転がる屍…

オレがずっと戦ってきた場所

赤い朱い紅い…もう…なにがなんだかわからなくなるくらいに、あかく染まってしまった…

あかの中にたちすくみ…

あかい空を見上げて…思う。

…見たい…青い空が

青が…見たい…

青い…キミを…

キミに…

逢いたい…

「ゼロ…ロ…」

青い空の下で君を想いたいのに。

「ギロロくん。」

「っ…」

何故…

ここに…

「ゼロロ…なんで…」

キミは綺麗に笑って言った。

「大丈夫だよ。」

いつのまにか目の前に願い願った青い色。

「ボクがいるから…大丈夫。」

ふわりと抱き締められる。

あったかい…

涙がこぼれて、

身体がふるえて、

声がでなくて、

それより不器用な自分には、

伝えたい想いが大きすぎて、

………どうしたらいい…

ゆっくりと目をあけた。

木漏れ日が起き掛けの目にしみる。

「あっ…ギロロくんっ」

ふと顔を向けるとパタパタと駆け寄って来る青い幼馴染みと目があった。

「ドロロ…?」

小さく呟くオレの額に軽いデコピンをくらわして、ドロロは困ったように笑った。

「ギロロくん、また倒れたんだよ?」

「倒れた…?」

…聞き返すオレの額に次は冷たい感触。

「日向さん家の水道使わせてもらっちゃった」

たらいにさっきまでオレの額にのせられていたであろう濡れ(もうかわきかけ)タオルをいれながら、ドロロは諭す様に言った。

「頑張るのはいいけどさ、あんまり無理しないでね。…心配に…なっちゃうから」

そういって伏せられたドロロの瞳は本当に心配だったのか…かすかに揺れていて

突然なんともいえない気持ちがせり上がってくる。

オレは無意識のうちにドロロをひきよせて強引にくちづけていた。

「…っ!!」

揺れる蒼い瞳が大きく見開かれる。

伝えきれないんだ。

夢で見た…あの頃から、

お前をこんなに想ってるのに…

伝えたい想いは…不器用なオレには重すぎて、大きすぎて、

目の前で揺れる愛しい蒼を掻き抱く。

小さな肩が一瞬ビクリと揺れ、そのあとおずおずとオレの背に手をまわしてきた。

「ギロロくん?」

耳元で小さく囁く、愛しい声。

「大丈夫だよ」

ああ…

お前はいつだって、そうだったな。

俺の強がりな性格を本当に見抜いてるのは、お前だけで。

実はとても脆くてすぐくじけてしまう心をわかってくれたのも、お前だけで。

俺の不安を分かってすぐにこうやって抱き締め返して囁いてくれるのも…

お前だけで。

なあ…俺はお前にどれだけのモノをもらったんだろうな。

それにひきかえ…俺は…お前に何をやれた?

愛してる、も

好きだ、も

伝えられない

そんなもので納めきれるモノかもわからないんだ。

「ボクね、今幸せなんだ。」

幸せ…だと?

「…不思議だね。…こうしてるとね、ギロロくんのキモチが伝わってくるような気がするの。」

…オレのキモチ…

「こうしてるとね、ギロロくんから一杯…あったかいもの、もらえるんだよ。」

俺の肩の上に顎をのせて小さく微笑む気配。

…オレは…お前に…何かやれたのか?

「ありがとうね」

小さな呟きが、俺の心に触れる。

ああ…そうか…

もう一度、今度はゆっくり、

俺たちはふりそそぐ木漏れ日の下で唇を重ねた。

〇伝え切れない想いを〇

この手にこの体にのせて…キミへ


end

→反省文
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