Love Story

□第七話
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さて、どうしようか…


傘はない。
雨は一向に止まない。
おまけに休日でバスはなかなか来ない、とあっては選ぶ選択肢が限られてくるって事だ。


つまり、

イチ。濡れ走る。

ニ。このまま雨が止むのを待って、そのうち来るであろう優姫に捕まる。





……………。



おれは鞄を斜め掛けしてから呼吸を整えて、

それから
濡れた地を蹴った。






第七話



とりあえず雨宿り出来そうな場所を探して走る。
鍛錬のつもりで家までランニング…にしようかとも考えたんだけど余りにも雨がキツくて諦めた。


視界も悪いし学校から走り続けて来たからそろそろ一息つきたい。


丁度目を凝らして見えた先に自然広場のゲートが見えた。


其処は歩く道筋以外は一面柔らかい芝生に覆われてて、
犬の散歩だったり子供たちのキャッチボールなんかに最適の場所として年齢を問わずこの辺の人達の愛用の場だった。


確かその広場の真ん中には象徴になってる大木があるはず…


「とりあえず、其処…までいく、か…」



少々乱れ始めた呼吸のリズムをそのまま維持して、目的地までラストスパートをかける。




ハ、ハ、ハァッ……



背中に降り掛かる冷たい水とこちらの体からの熱との温度差がなんだか気持ち悪い。


もう目の前と云うところで大きな水たまりの端に足を踏み入れ水がこっちまで跳ねた。



(やべ…、今ので靴に水が…)





もう少しって所だったのにとんだ失態だ。
…でもこれで漸く入れた大木はその高く見上げなければならない程の大きさだけあって周りに比べたら水もそれほど降ってこない。



これなら暫く此処に居られそうだ。

樹の周りには椅子と机が囲っていて、おれは濡れてなさそうな所を探してから其処に鞄を置いた。
中にまで水が来てさえいなければ確か鞄の奥に有る物が…使える、筈…


「っとはは、見ーっけ!」

底に入っていたのが良かったのだろう、まだ無事だったタオルを掴んでおれは体を拭き始めた。

流石にかなり時間がたったからこんな所にいる奴なんておれ位だ。

さっき傍を走ってた人を何人か見かけたけど、それも同じ方向じゃなかったみたいだし。



おれは視界の悪い広場の向こうにある一つのお店に目をやった。
そこにはおれの叔母さんがやっている小さな喫茶店がある。自分で云うのも変だけどおれと叔母さんは仲が良い、と思う。

もう少しだけ雨の勢いが減ったら店に逃げ込んでいつものを作って貰おうか…


温かい飲み物を想像するだけでなんだか気分が少し浮上した。

……と、そんな時だった。


おれが見てた喫茶店の方向とはちょうど逆側から誰かが走ってくる音が聞こえた。

目立ってそれが聞こえたのは他には偶に近くを通る車の音くらいしか聞こえなかったからかもしれない。

おれは何だろうと振り向いて―――……





(っう、うううう嘘!?)




慌てて向きかけた顔を戻した。
樹の端に鞄をズラして極力背中しか見えないようにする。



(な、なんでなんで…なんでだよ!!)



もう会わないで置こうって決めたのに…



まだ完全に想いを断ち切れてもいないこんな日に…。










どれだけ視界が悪くたっておれには解る。





こっちに向かって走ってきたのは紛れもない、

それはヴォルフラムだった…









続く








……すみませんorz
短い、なんて短いんだ私っ!散々待たせた結果がこれかい!という突っ込み、存じております。
その突っ込み始めた一番は何よりチハル自身だったので…

いやしかしですね皆様、漸くこれで女王様なしの二人きりシーンが書ける訳で……。
女王様蹴倒してそのまま逃走すれば事は一番早く済むと思うんですがね。←コラ
面白くないんでまだ続きます。すみません…
このヴォルフラムver.は既にあるのでもう少し話が進んだらupしたいと思います。
そうすれば、まだ本物の映画に追いつけない表現も少しは緩和されるかと…
ふぅ、文才とはなかなか身につかない物で困りますね…
さぁゆーちゃんどうなるのやら…
此処まで読んで頂き有難うございました!

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