Love Story

□第五話
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結局帰って来たら夜になってしまい、おれはペッドに寝転んで鞄から貰ったプレゼントを暫く眺めていた。

色んな角度から見て、振ってみるもこれといった音はしない。

とうとう中身が気になってリボンをゆっくりと引っ張った。





第五話



「………クマ」


現れたのは可愛らしいクマの人形のストラップだった。


なんというかあいつらしいかもしれない。


さてと、これをどうしようか。

おれは携帯は持ってないし…あまり出来れば人に見つかりたくない。


特に誰かさんに見つかりでもしたら引ったくられそうだ。


さすがにそれは嫌だった。

未練がましいかもしれないが、おれは今までヴォルフラムとの間で手にしたものはすべて大事に取っている。

だからこれを奪われたくはなかった。


見えない所にこっそりと付けるくらいなら許されるだろう。

そう考えて何かいいものはないかと立ち上がった。



カタン…


「ぁ、やべ…!」

ベッドから落ちてしまった小箱。
壊れてはいないかと慌てて取り上げると下向きにしてとったからだろう…、


中からヒラリと一枚の紙切れが落ちてきた。


(なんだ、これ………ぇ、?)





二つに折られたそれを開いて見る。


(これは………)





それは懐かしいヴォルフラムの字だった…






太陽の輝きが海に映える時、

僕は君を想う


春の薄暗い月光の夜に、

僕は君を想う










「……そうか、やっぱりそういう事、なんだよな」

疑うまでもない、
期待なんてする余地もない…

こんなにヴォルフラムの心はもうおれから離れてしまったのかと思うと…

痛くて…
凄く、辛くて…


胸がどうしようもなく締め付けられた。






おれにはもう…
これ以上ヴォルフラムにあう理由はない







『本当に!!?ヤダ彼ったら私にベタ惚れなんじゃない!!』
「…そ―みたいだな」

受話器越しに優姫の甲高い声が聞こえて思わず少し体から離してしまう。
おれは優姫に電話を掛けていた。
これが優姫に宛てて書いている以上おれが持つわけにもいかない。



『私のには何も入ってなかったのに…!!きっと私が取ると思って片方だけに入れておいたのね!!』
「…そーなんじゃないか?」

声に力が入らないおれと反対に嬉しそうに歓声を上げる優姫。


早く電話を切って繋がりを消して…、
そして独りになりたかった…



『それ!明日私に頂戴ね!!』
「あぁ」
『大事にしてよね!彼が私に宛ててくれたものなんだから!!』
「わかってるって」
『なに有利?元気ないわよ?失恋でもした―?』「……っ、!!?」

相手もいないのに思い切り受話器を見てしまう。

離していてもわかるクスクスと優姫の笑い声が耳をついた。


『やだ、冗談だったのに図星?ごっめーん!ほら辛かったらさ私も聞いてあげるし――』
「や、いいよ。それに何でもないんだ。じゃあおれもう切るから」
『ぇ、有利―?ちょっと待ってよ有っ………――』



プツン。






「ゆーちゃんご飯できてるわよ―!…まぁどうしたのゆーちゃん!?酷い顔よ?」
「平気、お袋おれ今日ご飯いらないから」
「だからママでしょゆー……、なんですって!?ゆーちゃん!!?」



お袋の声が遠くから聞こえるが、おれはそれ以上事もせずに部屋に篭もった。








もう我慢出来なかった。


次会った時、きっと文句を言われるんだろうが…もう知ったことじゃない。




そうか、
おれはまた失恋したんだ……―











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