Love Story

□第二話
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『私手紙って嫌いなのよね、こんなの何て書いていいかわかんないし…』


『ね!だから代わりに書いてよ!!』




第二話






先に言っておくがおれは手紙を書くのが得意ではない。
寧ろ苦手だ。文学少年ではなく野球少年に育ったおれは所謂脳みそ筋肉族。
こんな基本女の子が胸を踊らせて書くような…


書くような………




『ラブレターなんて書けるわけねーだろ――!!』




そう、おれは知りもしない相手(それもヤローへ向けての)愛の手紙なるものを書かされていた。

許可をした理由の大部分はこの女にある。




朝倉 優姫(ゆうき)



朝倉グループのお嬢様であらせられる彼女は、容姿端麗とか才色兼備とかいった言葉をまじで実際に現した様なやつで…


そして何の因果があいつのおばちゃんとうちのお袋は昔から…互いを意識しあっていた。

聞くところによると、昔おれが小さい頃に何かあったらしい。そこから表面上は普通だが何か煮え立つものがあるというのだ…


女って恐い。




とまぁ、無くていいような関係を背景に自由きまま、美しい世界とやらでお育ちあそばれた彼女は…




…今では中身までお嬢様、というか女王様になっていた。






『…出来た、と。もう知らねーぞ』


おれは持ちすぎて軽く痺れた手を放し、小さな音を立てて机にシャープペンを落とした。




字が汚いと言われようがそこは写せと返してやろう。
所詮男の字なんだ、文句のつけどころが間違っている。



女王様の命令には誰も避けられない…というのはおれの意見だ。
実際あいつは女子には仲良く友人もいっぱいいる。
そして男子は端麗な容姿であいつの発言を単なる『我儘』とは思わず『可愛いお願い』だと勝手に変換している。



それを見抜いているのは…、おれだけという訳だ。


(何故かおれに対しては『お願い』じゃねーしな)


寧ろ露骨に命令じゃねーか…



それもこれも、昔からの腐れ縁のせいだと思うと頭が痛い。
ちなみに幼稚園から一緒だったとはいえ幼なじみとは断じて言ってはやらない。



ま、それはいいとして。
おれは出来た手紙をもう一度読み返した。



本気で拒否ればなんとか逃れたかもしれない。テキトーにあいつに興味のあるやつを紹介してやればそいつも喜んで引き受けただろう。

でも、それが出来なかったのは…




『結構未練残ってんじゃん、おれ…』



これが書けたのはきっと、もういくら伝えたくても叶わない、そんな人がいるからで……


『練習……いくか』


文字を内側に折った手紙をなるべく丁寧に封筒にいれた。



言葉に吐き出さない分まだこんなに好きな気持ちが残ってる。
隠して、隠して…
行き場の無くした想い。



報われないこの気持ち…








『何処にいるんだよ…、ヴォルフラム』






野球に欠かせない沢山の荷物を詰め込んで、

おれは頭に残る気持ちを振り切る様に勢い良く部屋を出た。













それがおれが彼に再び出会う二週間前の事。





そして、





「なんで、こんな事に…」



おれは今都内にある美術館の前にいた…







続く

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