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□ベイビー☆パニック 2
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なんて言えばいいんだ?

『おれ、妊娠しちゃったー☆』

とか?
『グレタに兄弟ができるんだ』
『おれたちニ児のパパになるゼ?』


……とか??

「いや、ナイだろー、絶対」

ふざけるな、と罵られるのがオチだな。
どう考えたって信じられる訳があるもんか。











幸い、偶に気分が悪くなる程度でギーゼラの言うように食欲がないとか、食べ物みたら吐気がするーだとか、諸々の症状は今のところない。
そこはまー、なんというか健康男児といいますか、相変わらず心は複雑どころか動転してる程なんだけど、
現実だと受け入れざるを得無い状況で、これはまー、ありがたいことではあった。



あるんだけど………

「な、何でこんなことに……」


嘆かずにはいられない。だっておれ、男の子だもん。


でも、

「おーい、いるんだろー?」


そっとお腹に手を当ててみた。
まだちゃんとした形ができて無いみたいだけど、確かにこの中にはもう一つの命がある。

おれと、ヴォルフの……こ、子ど………



ガチャ。
「ユーリ?署名の調子はど「ギャーーーーーーッ!!!!!」」

「な、なななんだぁ!?どうしたんだユーリ!!」


視界の端に一目でわかる程の目立つ金髪。
今は心から叫べます。
何故このタイミングで来んだよ!!!
やべ、今びっくりしたよな。ごめんな
。お前のお父さんの所為だよ。え、どっちのって、………そりゃ、お、おおおおれじゃ無い方!!!



「か、カッ……」

「“カ”?何だ、何をいいたい」

「カッ……勝手に入ってくんな!此処はおれの部屋だ!!」

「なんだと?今更何をいっている。ぼくはお前の婚約者だろう」

「ああああ!もう!!いいから出てってくれ!」

「ユーリ、一体どうしたと言うのだ。最近のお前は明らかにおかし「頼むから!!!」

ああくそぉーー!!



「いいから、頼むから……っ出てけーーー!!!!」















*  *  *  *  *

(あれは……)


誰が見ても声を掛けずにはいられない位に、
我が弟はへこんでいた。


「おや、どうしたんだヴォルフラム。ユーリに資料を届けるんだって浮き足だっていったんじゃ無いのか?」

「……………コンラート」


何気なさを装いそのまま歩みを止めた弟に近付く。
確かさっき迄誰もが頬を緩める程彼は浮かれて居たのだ。
何がそんなに嬉しいのか帰宅したばかりの俺には状況を掴み切れていないが、どうやら、陛下に会う口実が出来た……とかで。

いつもの事だろう?と話しを割った俺に、ギーゼラは心配そうに笑ってその問い掛けを否定した。


そうであれば良いのですが……
そんな願望に代えて。


「どうした、浮か無い顔だな」

「…ぼくは、ユーリに嫌われたのだろうか」

「何だいきなり。眞魔国一のおしどり夫婦が何をいってる。」

寧ろ真逆だろうに…

「判らない。だが、どうやらぼくはユーリに嫌われたらしい」

「……何があった」

「……」

「ヴォルフ」

「…入って三歩で追い出された」

「そりゃまた、なんで」

「知るか!!ぼくが聞きたい位だ!!…何も、何も言ってくれないのに、どうやってあいつの心を知れという。
 そんな事聞かれる前に……ぼくが…知りたい位だ」

(こりゃ相当参ってるな…)


可愛い名付け子も大事だが、同じ位弟も当然可愛いものだ。
二人が円満でいてくれる事を望む他ない。


「よく判らないが陛下なりのお考えがあるんだろう。もう少し、待ってみたらどうだ?」


今言えるとしたらこの位だろう。陛下にお話を伺わないと…。そんな何方へも心配症な自分に思わず心の中で苦笑した。



「そ!そんな事お前に言われずとも解っている!ただ…あ、あいつが悩んでいる時になんの役に持たてない。
 それどころか悩みの種はぼくかもしれない!そんな状況で何も出来ない自分が情けなくて、…もどかしいんだ」


(いかに陛下の存在がこいつにとって偉大か、はっきりとわかる瞬間だな)


彼の存在はいつだって眩しくて、辺り一面を淡く柔らかく照らしてくれる。
例え誰であろうときっと変わらないだろう。
その暖かみこそが彼の誰をも引きつける魅力の一つで…
俺にしろ、ヴォルフラムにしろ、その恩恵を大切に護りたいと思っている事に変わりはない筈だ。


「そのうち、陛下の方からお前に会いたいとお思いになるだろう」
「……あぁ」

会話を其処で止めて、まだ立ち尽くした弟を置いてユーリの部屋へ足を向けた。
こっちがこうなのだから、あの方もきっと今頃頭を抱えて居るに違いない。




手の掛かる二人だ。
やれやれと思う反面、こうも頬が緩むのはきっと、二人の間に立てる自分のこの位置が思ってるより気に入ってるからなのだろう。


さて、なんて言葉を掛けようか。


陛下の居る部屋へ人知れず速度を速めた。







* * * * *


『そのうち、陛下の方からお前に会いたいとお思いになるだろう』



そう言葉を残してコンラートは去っていった。
恐らくユーリの部屋だろう。



…ああ、そうだな。
それが、どんな要件かまではわからないけどな。



「くそ、…」

情けない。あの婚約者に何かあればすぐこれだ。
不安で溜まらなくなる。
笑ってくれないのだ。
側に居る事も話すらまともにさせてもらえない。

こんなに想ってるのに。
ユーリの事で頭がおかしくなりそうだ。


堪らず廊下の壁に凭れた。
冷静になりたくて、思いきり吸い込んだ空気がいつもより冷たく感じる。
とても、楽観的にはなれそうにない。
ユーリの事ばかりが気になって、気になって、…仕方ない。


……あまり、長くは持ちそうにないらしい。



「本当にどうしたというのだ、ユーリ」

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