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□after
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「ううぅ、グレタ悪かったって、機嫌直してくれよー」
桜舞 after
城に戻って目覚めたグレタの落ち込み様はまた凄かった。
可愛らしくもなぜ起こしてくれなかったのかと、怒ってはユーリにその小さな手でしがみ付いて…
「ヴォルフラムが言ってたよ!約束だったって!!だから、グレタ楽しみで、楽しみで……ユーリのこと、まってたのに…」
分かっていた事なのにユーリは少々痛そうな顔をした。自業自得とはいっても、分からない訳じゃないからな。
まぁ、これを機に頭を冷やせば上出来というところだろう。
ぼくも、ユーリも、娘には敵わないのだから。
「グレタ、そろそろ許してやったらどうだ?ユーリも反省してる」
「だって…だってヴォルフラムっ」
「グレタ、彼処にある籠を持ってきてくれないか?そう、膨れるな。持ってきてくれ」
再び戻ってきたグレタに籠の中の小さな瓶を見るように薦めた。
機嫌直しだ。
案の定、ぱっと顔を明るくして、そして何かを企むように耳元に顔を寄せてきた。
「あのね、こしょこしょ……」
「お前ならそうすると思っていた」
グレタが嬉しそうに微笑む。
幼いなりに良い笑顔だ。
「なっ、何なんだよお前ら。なんか企んでんだろ、怪しーぞ!!」
「黙れ浮気者。こちらへ帰って来ず向こうで時間を過ごすお前が悪い」
「ユーリ!目ーつむって!!それから頭下げてね!ぁ、ヴォルフラムも!」
「あぁ」
「え、何だなんだ???」
早く早くーー!
訳が分からなそうなユーリ。
一生懸命時間を掛けて作業を終えたグレタの合図でぼくもユーリも頭を上げた。
「……へ?」
「ふ、やはりユーリには花がよく合うな」
目を点にしているユーリの髪に小さなサクラの花が乗っている。
帰りに綺麗そうなものを三つ程選んで拾ってきていたのだ。
だからぼくの頭も同じ筈。
「わ!笑うな」
「笑ってなど、いない。ぼくは…至極真剣だ。ほら、グレタ頭を少し下げてろ」
「うん!」
「声震えてんだよ!それから顔が笑ってるっつの!!」
顔を真っ赤にして吠えるユーリを放っておいてグレタにもサクラをつけてやる。
柔らかいグレタの巻き髪にそっと花を差し込んで落ちないようにしてやった。
茶色の髪に薄いサクラの色がよく映えている。
「似合っているぞグレタ」
「ほんと??ヴォルフラムもユーリも、すごくカワイイよ!」
「可愛いのはグレタとヴォルフで充分だけどな。グレタよく似合ってる」
こんな時のユーリはとても甘い顔をする。二人の時とはまた少し違うが、これはきっと家族だからこそ見れる表情なのだろう。
「グレタ、どうだ?ハナミという訳にはいかないがこれで少なくともぼく達は揃ってサクラの下だろう」
「ヴォルフラム…」
子供騙しには変わりないが何もしないよりはきっとましだ。へなちょこな王と一緒では苦労する…違うか?
「ごめんな、グレタ」
「ううん、もういいの。ユーリはグレタが寝てるから起こさなかったんでしょ。ほんとはグレタね、わかってるの」
でも、せっかくユーリが帰ってきたから…
ちょっと残念だっただけ。
「ぁ……うん」
グレタは聡い子だ。過去の暮らしの所為で人の気持ちを敏感に感じ取る事を身につけてしまっているから、既に自分を抑える技を知っている。
でも、ぼくもユーリもそれは望まない…
グレタはグレタらしく、子供らしくしたいこと言っていいんだから。
「グレタ、今日は三人で見ることは出来なかったがまだ、少しなら時間もあるだろう。ユーリの仕事次第だな。今のうちに頼んでおけよ」
「……うん!グレタ今度はちゃんと起きてるから、ユーリとヴォルフとみんなで行きたい!」
だ、そうだぞ?これはうかうかしていられまい。
どうせ脳裏に兄上が出てきたんだろう、ユーリが『頑張りマス』と苦笑を漏らしながらそう言った。
約束はいくつしてもいいのではないかと偶に思う。
約束すれば、するだけ、触れあえる機会があると言うのなら、それを逃す手はないだろうから。
「ユーリ、ヴォルフラム、じゃあやくそくね!!」
end.
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