main
□Fly
1ページ/2ページ
「神ってさ残酷だよな。」
「へ? なに、遅めの中二病なの?」
訓練の合間の僅かな休息中に 砂糖とミルクたっぷりの激甘コーヒーを飲みながらファルコンJr.は
ふぅ、と溜め息を吐いていた。
そんなファルコンJr.を訝しげに見詰めるギークは咄嗟に"パートナーが中二病になってしまったら"と
自作のタブレットで検索を掛ける。
「バカヤロウ。中学生なんざとっくに卒業してるわ」
「…そういう所が中学生なんだけどなぁ、まあ良いや。んで なんで神様は残酷なの?」
「んー、だってさぁ…」
"そういう所が中学生"というギークの言葉に不服そうに眉を歪めつつ、
マグカップをテーブルに置き ファルコンJr.は口を開いた。
「俺たちが明日、殺さなきゃいけねぇ奴等にだって家族やら恋人やらが居るんだぜ? 今更情を買うなんてことはねーけどさ、殺されずとも死んでく人間を作った神が、1番残忍で残虐な殺し屋なんじゃねーかなー、とか思ったわけよ。」
「…ハヤブサは馬鹿だね。」
「あー?どーせ俺は頭脳派のギークとは違…んッ…」
むくれて反論するファルコンJr.の唇に突然、温かく 柔らかいものが触れた。
チュッと音を立てて離れたそれに変わるように
ファルコンJr.の身体は
よく知る甘い香りのする細い胸に抱き締められる。
「ぎ……く ?」
「…俺は、神は残酷だとは思わないなぁ。」
か細い声でギークは ぽつり ぽつりと呟く。
「え…?」
「ふふ。ハヤブサが変なこと言うから、からかっただけだよっ」
ファルコンJr.から離れるとギークはいつものように笑っていた。
「な、なんだよ、びっくりしたじゃんか。」
「ねえハヤブサ、一つ質問があるんだけどさぁ、」
「ん?何?」
「標的がどんな強敵でも、ハヤブサは必ず殺せる?」
「当たり前だろ。俺はそれが家族だろうと、殺す。それが俺の使命であり御前と一緒に居るための術だからな。」
ファルコンJr.はそっとギークの手を取る。
「…それがもし、___でも?」
「……え?」
ギークは 笑いながら涙を溢していた。
end