wrwrd まとめ

□tngr 軍ぱろ 6
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暗い廊下に微かにレコードの音が響く。
tnは淡くため息をつくと寝室のドアを開けた。
『grさん…眠れへんの…?』
静かに声をかけたつもりだったが、月光に照らされた背中は一瞬大きく震えた。
あの事件以来、grは夜眠れないらしく不寝番の兵卒たちから報告が上がっていた。
『grさん…?』
『や、いやや…触るな!!!!』
肩を叩くや否や、全力で逃げようとする身体を抱き締めて、胸に顔を埋めさせる。
『grさん…大丈夫…tnやで…』

『多分、後遺症言うか…残るやろな。薬の、も勿論あるけど、…心、やな』

軍医の悲しい声が、耳に甦る。
『grさ』
『離せ…!!!!いや、っだ、助け…tn』
『grさんっ…』
虚空に伸ばされる手を取り、己の頬に触れさせる。
見開かれた瞳のまま、深く口づけると少しだけ身体の抵抗が弱まった。
『ん、…ふ…tn…?』
『うん…落ち着いたか…?』
『…俺、何してた…?』
『少し…寝惚けてただけや…』
『そうか…』
冷や汗をかいて肩を震わせるgrを見て、先日の誘拐犯を憎々しく思う反面、嬉しさも感じてしまう。
−何度も、こうしてこの人は、俺の名前を呼んでいたのかー
柔らかな髪を撫でながら、もう一度瞼に口づけを落とす。
その柔らかな心地よいとも取れる感覚に溺れてしまいそうな刹那。
grの耳には、emの声がtnと重なり聞こえる。
咄嗟に耳を抑えるも、手首が視界に入り息が詰まる。
一ヶ月の間の拘束で刻まれた『痕』が、そこにはまだハッキリと残っていた。
『……だめだ、tn』
『え』
『大丈夫、だから』
必死に、手首を握り隠し顔を背ける。
こいつにだけは、絶対に見られたくないと虚勢を張ってみせる。
『確かに…寝惚けていた、ようだ。もう、大丈夫だから…下がりたまえ』
笑って見せたつもり、だった。ふいにぐるりと視界が回転し、咄嗟に受け身を取らされた気がした。
『…?』
うすぐらい天井が見え、状況がのみこめない。
どうやら、カウチに横にさせられていると理解したとき、体重をかけてtnが覆い被さっていることも共に把握した。
『な、ぇ、…』
『grさん、もう笑うな…』
そっと傷ついた手首を取られ、囁かれる。
赤黒くあの日の痕の残る場所に、壊れ物の様に唇を寄せるのを見て、grは思わず手首を振りほどこうとした。
『い、やや、…汚いから!!あかん…!!』
『汚くない』
しっかりとした声でtnは囁いた。
『grさんに、汚いとこなんか、ない』
『…っ!!』
ぴちゃりと、舌で痕を上書きするようになぞる。
『どんなになっても、…俺はgrさんが…好きや』
『…え、』
『何度も…俺の名前を呼んでくれたんやろ?…アイツにはムカついたけど…嬉しかったんや…』
薄明かりに見開かれた目。
宝石のような、煌めく瞳の色。
『俺…grさんを…愛してる』
『男…だぞ?細くもないし、若くもない』
『うん。そのままが…好き』
途端に、gr の瞳から涙が溢れてきた。
熱い目もとに手を載せ、grは長い溜め息をついた。
『あー…………なんや、俺が悩んできたの、嘘みたいや』
『grさん?』
『男だからとか、色々悩んだんだぞ?』
涙が、なぜか止まらない。
emに犯された時の苦痛で再認識した思いを、相手も共有していただなんて。
『好き…なんだよ、…俺も…tnが』
『…うん、前回の事件で…気づいてました…』
笑いを含みながら言われて、恥ずかしさに顔を覆う。
『なんだよ、…っかっこ良すぎで腹立つ!!!!』
恥じらう手を外させ、顔を寄せるとgrは一瞬怯えた顔をした。
『キスは、嫌だ、…口、汚された、から』
『大丈夫や…言うたやろ?』
唇を食みながら、夜衣を寛げていく。
夜目にも艶やかな、白い肌が露になる。
『何度でも…上書きしたる』
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