流星

□告白
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コンコンコン…


その夜、僕はレンの部屋を訪ねた。


君からの返事はない。


「もう寝ちゃったかな…」


諦めて自分の部屋に戻ろうとしたそのとき


カチャ…


「遅くなってごめんなさい…シャワー浴びてたから…」


「っ!!……」


本当に急いで扉を開けてくれたんだね。その気持ちは嬉しいよ。でも…その格好、今の僕にはちょっとキツイかも…いや、嬉しいのも正直なところなんだけど…


いつもは結い上げらている長い髪は水分を含んだ状態で下ろされ、服装はネグリジェといった装いだった。


僕のことを意識してないのはわかってるんだけどさ、いくらなんでも無防備すぎない?こんな時間に来た僕も悪いのかもしれないけど…


僕大丈夫かな…


「?夜天?どうしたの?どうぞ入って」


僕がなかなか喋らないことに疑問を持ったのか、レンは部屋に入るように僕に促した。


「…お邪魔します」


僕は平静を装いながら部屋の中央辺りにあるソファーに腰掛けた。


「今紅茶を淹れてくるから、少し待ってて」


そう言ってレンはパタパタとキッチンの方へと消えていった。


…あんなの反則でしょ、可愛すぎでしょ…小柄なのにスタイル無駄に良くて、出るとこ出てるし…


「……」


僕何考えてるんだろう…


「はいどうぞ」


よからぬことを考えていた僕の思考を断ち切るかのように、僕の前に紅茶が置かれた。


「あっ…ありがとう」


「こんな時間にどうしたの?何かあった?」


「あっ…いや、もう休む時間だったよね…ごめん」


「ん?そんなこと気にしないで、大丈夫だよ」


差し出された紅茶のおかげで現実に引き戻された僕は、ここへ来た目的を思い出した。


「あのさ…ピアス見つかったの?」


「え?あぁ…あれね、やっぱりないんだ。大切にしてたんだけどね…仕方ないよ」


レンがそっと紅茶に手を伸ばし、まだ熱いだろうそれをくいっと喉に流し込む。それはなんだか本当は諦めきれないという思いも一緒に飲み込もうとしているようにも見えた。


レンのその表情から余程大切なピアスだったんだろうと優に想像できて、思わず僕はズボンのポケットの中のモノをギュッと握りしめた。


覚悟して来たはずなのに…ここまで来て一瞬怯んだ自分に少し苛立ちを感じた。




いや逃げない、決めたんだ。


僕は前に進む




ガタリと立ち上がりレンの前までその距離を詰めると、大きな瞳を更に大きく見開くレン。


「これ…あげる」


すっとレンの目の前に差し出されたそれは一つの小箱。白の無地に遠慮がちに小さめのピンクのリボンが掛けてあった。


「え?…私に?」


小箱と僕を交互に見るレン。僕の気持ちなんて知る由も無い君には、どうしてこんな物をよこすのか不思議でならないんだろうね。


「受け取ってほしいんだ」


なかなか小箱を手に取ってくれないことに少し焦りを感じて、僕はレンの手を取り、その掌にそっとそれを置いた。


「…本当に…いいの?」


「もらってくれなきゃ困るんだけど…開けてみて?」


レンは言われた通りそっとリボンを解き蓋を開けた。中には雫型の薄い青緑色のピアスが入っていた。それは透き通る程透明感に溢れているのに、角度を変えると青緑色が色濃く映えて見え、このまま吸い込まれてしまいそうな感覚さえ覚える。


「レンにはその色が似合うよ。なくしたピアスの代わりにはならないかもしれないけど…」


「そんなっ…代わりにならないだなんて…嬉しいよ夜天、ありがとう」




君が似合う?とふわりと笑えば、もう理性なんて簡単に吹き飛んだ。




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