巻物ー恋物語ー
□第五章
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「おーすごいっすねー」
未だ嘗てこんなに巨大な船を見たことがあっただろうか。それはここに立ち並ぶ誰もが同じなようで、鬼宿のその一言に同調するようにうんうんと首を縦に振る。
明日の朝、いよいよ神座宝を求めて北甲国へ向けて旅立つ私たちは、荷積みのために港へ来ている。
朱雀七星士内の最年長である井宿と知力の能力を持つ張宿の提案で、北甲国へは運河を使って入国することとなった。
船はここ紅南国の皇帝陛下である星宿様が用意してくださったのだ。
「ちょっと遊んでないで手伝いなさいよっ」
カナヅチだということが判明した翼宿をからかう鬼宿の横で柳娟がぶつぶつ文句を言いつつ、早速大量の荷物を運んでいる。
「私も手伝うよ。これを運べばいいんだね」
私は木箱二箱に何が入っているのかそこそこ重い麻の袋を三個を軽々と持ち上げた。
「なっ…なんや?!恋の能力は柳宿と一緒やったんか?!」
船の端の方で鬼宿と騒いでいた翼宿の驚いた声が耳に届いた。
確かに普通の女の子はこんなに大量の荷物を持ち上げることはないだろう。翼宿の驚き様に、そういえば自分の能力について皆に説明していなかったことに気付いた。
「柳娟の力だけじゃないよ。朱雀七星、全員の能力を使えるの。但し皆程の力はないわ。ほんの少しだけよ」
そう、私が使えるのは皆のそれぞれの六〜七割程の力と、この数ヶ月でに身につけた武術のみ。亢宿が欠けた青龍側も、青龍を呼び出す為に必ず神座宝を狙ってくるはずだ。争いは避けられない。私のこれだけの力でどこまで青龍と戦えるのかはわからないが、全力で巫女と七星士たちを守ることが私の役目だ。
「みんなーこっち向いてー!」
一人心の中で気合を入れていたときだ。美朱ちゃんの呼ぶ声に鬼宿、翼宿、柳娟たちと一緒に後ろを振り向いた。
「へへーっ、記念、記念!」
そう言ってにっこり笑う美朱ちゃんが持つ不思議な物からシャーという音と共に一枚の紙が出てきた。
「あら?なーにそれ?」
「ポラロイドだよ」
「おおっ!?こんなところにオレがっ!!」
ぽらろいどと呼ばれる初めて見るそれから吐き出された紙には、私たち四人がいた。何故か柳娟たち三人はしっかりと格好良くきまっている。
「ね!写真みんなで撮ろう!」
美朱ちゃんの提案で写真とやらを九枚撮り、七星士全員に渡された。
「はいっ恋ちゃんも」
「ありがとう。大切にするね」
そこには笑顔の皆がいた。柳娟も私も。一度グッと抱きしめ、服の内側へとそっとしまった。
この皆の笑顔は私が護る
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