お祝いの華を
□予期せぬ出逢いだった another story
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予期せぬ出逢いだったー後日談ー
大京
「これ……」
龍之介は、部屋の床に落ちていたレシートを見ると目を細めて笑った。
「買ってくれてたんだね」
龍之介の理解した時には、鵺の姿はなかった。
side change
京鵺
「………はぁ…はぁ…」
京鵺は鵺から意識を取り戻していたが、何処に自分がいるのかわからずに大きく息を吸いながら周りを見ていた。
「み、、見覚えないな……」
携帯やお金があれば、電話をしたり最悪タクシーを使うことも出来たのだが、どちらもない今は非常に好ましくない状況にいることがわかる。
「こんなところに居るなんて、どうかしたのか?」
目の前に現れた人物に京鵺は驚いたが、見上げると見覚えがあり安堵を感じながらその人物の名前を呼んだ。
「二階堂さん…」
安心しきった顔をしていると、おでこに痛みが走る。
「二階堂さんじゃなくて?」
その痛みの原因は大和が京鵺にデコピンをしたからであった。
大和はいたずらっ子のように、京鵺を見つめて笑った。
「…や……大和」
戸惑いながら大和を見つめて京鵺が言うと大和は嬉しそうに笑った。
それから、こうなってしまった理由を話すと大和は少し眉間に皺を寄せた。
「………そうか
まぁ、慌てていたのかもしれないしな」
気にすることはない、そう言うと、京鵺の頭にあったペニチュアの花を見付けた。
特にそのことは触れないでおこうと判断し、大和は京鵺にそのことを言わなかった。
「八乙女事務所だよな
俺は一緒に行けないけど、地図なら書くよ」
京鵺と近くの公園に向かうと、大和は紙とボールペンで八乙女事務所までの地図を簡単に作り上げた。
「こんなもんだろ
はい、お兄さんからのプレゼント」
大和がからかうように京鵺に言うと、京鵺は紙を受けとると、髪にさされた花を取って大和に差し出した。
「はい、お兄さん
僕からのプレゼント」
京鵺は、嬉しそうに目を細めて笑う。
お返しがあるなんて全く考えていなかった大和は驚いた顔をしたが、その花を受け取った。
「茎も短いし、僕の髪にあったものだから…汚いかもしれないけど」
京鵺はそう言うと、目を伏せた。
「……汚いことはないと思うが、こうしておくよ」
大和は花を手に取ると、魔法のようにその花をプラスチックの中に入れてしまう。
そのプラスチックはキーホルダーのようで、元々ペニチュアが入っているもののように感じた。
「………綺麗だね」
笑う京鵺に大和も笑った。
「これは鞄にでもつけておくよ
ありがとう」
大事そうにポケットに入れる大和に京鵺はお礼を言うと、駆け出した。
「助けてくれてありがとう」
そう言った京鵺の言葉を聞きながら大和はドラマの撮影場所に向かうのだった。
「……助けてなんか……ない」
傷付いた顔をした大和は足早に移動しながら拳を強く握った。
完。
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