お祝いの華を

□ポッキィー
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ポッキィー


大京


「今日はポッキィーの日なんだってな」


今日も今日とてお仕事のため、楽屋で寛いでいた僕達。


部屋の真ん中にある三人掛けのソファーの右側に座っていた楽は左側に座っていた僕の方を見た。


楽の言葉に耳を傾けていたので僕は直ぐに楽を見る。


その後、僕が口を開こうとすると僕の目の前に天くんが現れる。


「何馬鹿なこと言ってるの

今から仕事なんだからそのゆるゆるに緩んだ顔引き締めてよ」


天くんは楽にそう言うと、僕に気にしなくて良いからねと微笑んでくれた。


僕は目の前に居る天くんとの距離が近くて声も出せずに頷いた。


迫力があるというか。なんというか。


「おい、天

俺は今京鵺と話を………」


楽がまた何か話そうとしたいたが、姉鷹さんが楽屋に入ってくると渋々立ち上がった。


龍さんは……?


そう思って辺りを見渡すと、眠そうにしている龍さんが居た。


「龍さん……?」


僕が声を掛けると、龍さんは肩を大きく跳ねさせると僕を見た。


「ごめん、昨日飲みすぎちゃって……」


あ、声を出さない方が良かったかな?


僕が口元を両手で隠そうとすると、楽の大きな声が響いた。


「仕事の前の日はやめておけっていつも言ってるだろ!!」


その声を聞いた龍さんはおでこに手を置いて苦しそうな顔をしていた。


そうだ。楽から聞いたことがある。


お酒を沢山飲むと次の日に頭が痛くなったりするらしい。


これが、ふつかよい。というものなのだろうか。


「…………楽、」


僕の声を聞く前に楽が龍さんを捕まえて連れていってしまった。


「京鵺、貴方の出番には少し時間があるからゆっくりしててね」


姉鷹さんはそう言うと優しく微笑んでくれた。


僕は頷くといってらっしゃいと手を振った。


………………バタン。


僕も含めて五人も居た楽屋が一瞬にして静寂に包まれる。


その状況が怖いわけでも嫌なわけでもない。


ただ、静かになってしまったという寂しさを感じていたのだ。


「さてと、僕も頑張ろう」


四人に飲み物でも買ってこようかな。


僕は財布にあるお金をきちんと確かめると、自動販売機に足を向けた。


「……えと…龍さんには」


皆のいつも飲んでいる飲み物を買った。


龍さんはふつかよいだし、お水の方が良いよね。


そう考えていたが、お金を入れて固まる。


た、、、高い。


一番上に輝いているお水を見る。


ジャンプをすれば届くかな。


「……えいっ…!」


僕はジャンプをするがやはり届かないものは届かない。


恥ずかしくて周りを見ると、誰かが此方に歩いてくる。


別に隠れることなんてないのに、僕は柱の後ろに隠れて相手を見ていた。


「………あー、これは完全な二日酔いだな」


気分がその人も悪いのかと思っていると僕はあることに気付く。


お金は、自動販売機に入れっぱなし。


皆の飲み物を自動販売機の近くに置いている。


「………ん?」


気分が悪い人もそれに気付いたらしく辺りを見渡している。


み、見付かったらまずいよね。


僕は、目を閉じてしっかりと柱の後ろに隠れた。


「………………」


突然誰かに頭を撫でられて驚いて顔を上げるとそこには二階堂さんがいた。


「…………二階堂さん」


僕が声を出すと二階堂さんは笑った。


僕が置いていた飲み物とお金を返してくれた。


そして、耳元で低い声を出される。


「………二人の時は?」


「………っ…!!?」


僕が驚くと二階堂は左手で口元を隠すとクスクスと笑う。


僕は顔を赤くしながらも、お礼を言う。


「わざわざ隠れることもないと思うけど?」


二階堂さんがそう言うと僕は顔を下にしながら呟いた。


「………お水を買いたかったんですが…届かなくて」


僕の声を聞くとあー、と自動販売機に二階堂さんは納得したように頷いた。


「…あ、そうだ」


二階堂さんは、何か思い付いたのかいたずらっ子のような笑みを浮かべて僕を見た。


「京鵺、お兄さんとゲームしよーぜ」


僕は、二階堂さんの顔を見て何の疑いもなく頷いた。


「………じゃあ、ほい」


二階堂さんは、僕にお菓子を差し出した。


それは、ポッキィーというお菓子だった。


一袋には五本入っている。


「ありがとうございます」


僕は、一本もらうと食べる。おいしいな。


モグモグと食べていると二階堂さんが僕を見る。


あれ、食べたかったのかな?


「………に、、大和さん?」


僕が名前を呼ぶと二階堂さんは、驚いた顔をした。


「あ、、ああ、」


二階堂さんは、謝るとポッキィーゲームをしようと話した。


ポッキィーゲーム??


早食いとか??


二階堂さんは、二本目は二階堂さんがポッキィーゲームの方法を教えてくれた。


両端を二人でくわえて食べるらしい。


二人で食べるなんて楽しそうだよね。


三本目を二階堂さんは取り出すと自動販売機の前にある椅子に座るように言ってきた。


僕が座ると隣に二階堂さんも座る。


「それで、条件を付ける」


ポッキィーを僕に差し出すと二階堂さんは笑った。


「先にポッキィーを食べて相手にキスをすること

お前さんが勝ったら水を買ってやるよ」


俺が勝ったら、、そうだなぁ。と濁すと僕を見た。


「……どうする?」


二階堂さんの言葉に僕は、戸惑ってしまった。


キス………!?


あ、えと。それって。。


でも、お水。。


……………。


「………わかりました」


僕は、ポッキィーの端を噛むと二階堂さんを見た。


二階堂さんは、笑うと端を噛んでポッキィーを噛んでいく。


二階堂さんが近付いてきて僕は固まるしかなくて顔がだんだん赤くなっていくことを感じていた。


僕の顔の目の前まで来ると二階堂さんはポッキィーを折ってしまう。


「…………おいおい、負けても良いのか?」


二階堂さんが呆れたように言うと、僕はハッとして四本目に挑んだ。


二階堂さんと同時に端を噛むと僕は必死になって食べていった。


けれど、おかしい。


「…………」


二階堂さんは、全く動かない。


笑って僕のことを見ていた。


…………ま…また、からかわれてるのかな?


僕がぐるぐると考えているとポッキィーの折れる音が響く。


「……へ…?」


僕が声を出すと二階堂さんは、顔を下にした。


「………可愛い…」


二階堂さんは何か言っていたが聞こえずに聞き返した。


「………二階堂さん?」


僕の声で顔を上げた二階堂さんは笑った。


「……全く…ちゃんとしてくれよ」


そう言うと最後の一本を出して二人で端を噛む。


四本目同様、二階堂さんは動かずにじっとしている。


僕は、恥ずかしくなりながらもポッキィーを食べ進めて二階堂さんの顔が近付くにつれて顔が赤くなっていく。


そんな僕を二階堂さんは見ると嬉しそうに笑った。


………うぅ。恥ずかしいよ。


目の前に二階堂さんが来ると恥ずかしくなって僕はポッキィーを折って、二階堂さんの頬にキスをした。


顔が熱くてまともに二階堂さんを見ることが出来ない。


「………ぽ…ポッキィーを食べて

キスすれば………良いんですよね?」


僕の言葉に二階堂さんは、一本取られたなと笑った。


その後、直ぐに二階堂さんは手品のようにお水を取り出して僕に渡してくれた。


「………ありがとうございます…」


僕は、二階堂さんを見れずに居ると二階堂さんは僕の頬を両手で包むと顔を上げさせてくる。


恥ずかしいけれど僕は二階堂さんを見てしまう。


「………でも、"二階堂さん"って呼んだから罰ゲームな」


二階堂さんは、僕にキスをすると舌舐めずりをする。


僕は、顔が熱くて固まってしまっていた。


二階堂さんは、クスクスと笑うと


「甘いお菓子ごちそうさま」


と言って僕の頭を撫でると帰って行った。


僕は、放心状態のまま恥ずかしくてその場からしばらく動けなかった。


帰ろうとすれば京鵺は、あの光景が浮かんできて顔を赤くしてしまうのであった。




…………



「二日酔いでも、あれがあれば酔いさめるな」


大和は、顔を赤くしながら歩きながら言った。




完。




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