短編

□やけ酒
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「.....はぁ、もうやだなぁ」

私、渡邉理佐は盛大に振られました

いや、まだ振られた訳じゃない


奪われた


「ねぇねる〜。もっと飲もうよぉ」

「ねぇ理佐、もうそのくらいでやめといたら?飲みすぎだよ…」

「ねぇお酒ぇ〜!!」

こんなに酔い潰れてるのには理由がある


私が恋してる相手W渡辺梨加W。


可愛くて、バカで、何も出来ない


そんな彼女にいつしか惹かれてた

それなのに私の友達W志田愛佳Wが抜け駆けして付き合っちゃったんだ

抜けがけっていうのは悪く言いすぎた

それにまだ噂で聞いた。

お互い両想いだったのを私が一方的に
梨加ちゃんを好きだっただけ

ただそれだけ。

付き合ってる事を噂で聞いたのは今日

このクリスマスの夜に。

いつから付き合ってたのかな

ほんとなのかはわかんない。

けどそうと知るのは今日じゃない日がよかったな。

こんな聖なる夜じゃない日に。


こうして今、ずっと私の想いを知っていてくれて相談まで聞いてもらってたねるが
私のやけ酒につきあってくれているってわけ

「ねるぅ〜。私ずっと好きだったんだよぉなのに愛佳がぁ....あぁ〜私これからどうすればいいの〜」

「けど理佐はペリちゃんの事好きっちゃろ?」

「当たり前じゃん!!
嫌いになんて....なれるわけないよ」

「なら、そのままでいいんじゃない?
私なら、ずっと好きでいるなぁ。
そうすれば、誰よりも近い存在でいれるかもしれないでしょ?」

「..んぅー......ねるってさ、好きな子いるの?」

「えー?どうしたんよ、急に」

そういえば今まで私の相談ばかりで
ねるの事は聞いたことない

誰かいるのかな?

「.....いるよ。けど気づいてくれてない」

「.....片想い?」

「そう。それに向こうにも好きな人おるし。
まぁ向こうも向こうで片想いやけんね」

「へぇー、ねるのそうゆう話初めて聞いたかも....」

「もぅ、私の話はいいっちゃけん。
ほらお酒きたよー」

こんなイイヤツでいい女そういないよ

愚痴と恋バナばっかりで急な誘いなのに
ちゃんと毎回来て文句も言わずに話聞いてくれるし

ねるに恋したかったなぁ

「私、恋する相手間違えたなぁ。
ねるに恋すればよかったなぁ」

なんて冗談も優しく受け止めてくれる

こんな女神、他探してもいないよ

「そんな事言わないのー。
そんなに好きなら今電話してみれば?
まだ本当に付き合ってるかわかんないよ。
当たって砕けろって言うし」

ねるの言葉にはいつも背中を押される

確かにまだうわさの段階

ほんとじゃないかもしれない

私は意を決しコップに入ったお酒を一気に飲み干した後、梨加ちゃんの連絡先の通話ボタンに指を運んだ

画面が着信中に変わり耳に携帯を押し当てる

鼓動が高鳴って心臓が出てきそう

やばい、私ってこんなに梨加ちゃんの事好きだったんだ


4回目のコール音が鳴り終わったくらいかな

やっと梨加ちゃんの声が聞こえたのは


『....理佐ちゃん?どうしたの?』

「あっ....とあの..さ。.....んと、その」

『フフッ...どうしたのー?
今日の理佐ちゃん面白い』

「あの、さ.........ずっと前から好きでした。
…....付き合ってください」

ほんとにただの勢いだったのかもしれない

けどこの時の勢いに少し後悔した

『....えっ『はっっ?』

お酒と勢いって怖いね

暫くお酒はいいかなって思えたよ

「...えっ?」

梨加ちゃんの"えっ"って可愛い声と同時に聞こえてきたドスの効いた声は明らかに梨加ちゃんじゃない


あぁわかった

あいつしかいねぇじゃん


「...愛佳?」

『当たり。おい理佐、私の女に手ぇ出してんじゃねぇよ。言っとくけど、ベリは私のだから。あんたなんかに取られる理由がねぇし。
…あと、あんたの一番近くにもっと大切にしないといけない存在、いるんじゃねーの?』

さんざん喧嘩売って言うだけ言ってMerryX'masの言葉を最後に電話を切られた

なんだよそれ

噂じゃねぇんじゃん

やっぱり付き合ってんじゃん

ほんと最悪な、クリスマスだよ



しかも最後の言葉なんだよ


私の一番近くに大切にしないといけない存在がいる?

そんなの一人しかいねぇじゃん


「.....ねる?」

ねるが今に会話を聞いていたのか
聞こえていたのかわからない

だけどいつもみたいににっこり微笑んで

「一緒にやけ酒しよ?
片想い同士でしょ?」


そう言ってくれていた


愛佳、あんたの言う通りだよ


もっと大切にしないといけない存在、いた


ずっと想ってきたから、
まだまだ梨加ちゃんの事は好きで
切ないクリスマスなのは変わりない


そう簡単に忘れる事なんて出来ないけど



これからはとても近くに居た女神を
大切にしていきたい


あっけど本当にしばらくお酒はやめたいな



この後、志田にさんざんしばかれたのは
言うまでもないし





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