短編

□クリスマスソング
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「...会いたいなぁ」



何処かで鐘が鳴って
らしくない言葉が浮かんだ

その寂しい言葉に似合うような
寒さは心地よくて

ふと思った。

あれ、なんで恋なんてしてんだろう

だって愛佳にはあの子がいるでしょう?


聖夜だなんだと繰り返す歌と
わざとらしく煌めく街のせいで

渋谷のガードレールに1人座ってる私が
冷たい風に揺られてる

「...今頃、何してんだろ」

その言葉の裏側には、会いたいが詰まってた

けどそう思う度にわかる

会えないことが。

だって愛佳はあのこと過ごしてるんでしょ?

2人で笑って過ごしてるんでしょう?

さっきLINEが来て2人仲良くサンタの恰好
なんかした写真送られて来てたし

返事なんてできない

やっぱり会えないんだよ


会いたいと思う回数が
会えないと痛いこの胸が
愛佳のことどう思うか教えようとしてる。

私は、愛佳が好きなんだ

どうしてだろうね

サンタさんが教えてくれるかな?

やっぱいいよ、大丈夫。
そんなこと教わるほど子供じゃない

こんな事、サンタとやらに頼んでも仕方ない


本当は、今年のクリスマスプレゼントは愛佳がいい

できれば横にいて欲しくて
どこにも行って欲しくなくて
私の事だけをずっと考えていて欲しい

けどこんな事伝えたらカッコ悪いし
長くなるだけだからまとめるよ


「愛佳が好きだよ」


さっきの写真を開き
何度も愛佳だけをアップにして呟いた

こんな事してても、虚しいだけだ

携帯を開くのをやめて前を向いたら、はしゃぐ恋人達がトナカイの角なんか生やして

よく人前で出来るなぁ

なんて思ったけど、さっきの愛佳たちを見てたから羨ましいだけなのかも

…いや、羨ましくなんてないけど

そんなのただの意地だよね

愛佳が喜ぶプレゼントってなんだろう?
あの子にはあげられない
私だけがあげられるものってなんだろう?


きっとぺーは簡単に好きというプレゼントを
あげることができるんでしょ?

愛佳も簡単に好きってお返し出来るんでしょ?

もし今、愛佳に大好きって伝えたらどうなるかな

困る?怒る?
それとも優しく笑ってくれる?

嘘でも、冗談でもいいから
私も好きだと伝えてよ

だけどもし『大好きだ』と言った返事が
思ってたのとは違っても

それだけで嫌いになんてなれやしない

不意に空を見上げたらとてつもなく綺麗で
写真を撮ってまた愛佳に送ろうとしてる


星に願いをなんて柄じゃないけど

結局愛佳じゃないと嫌なんだって
もう一度見上げたんだ


私ってなんで愛佳の事こんなに好きなんだろ

そういえばあの時
あの時愛佳に出会ってただそれだけで

自分も知らなかった自分が次から次に
出てきてしまった

それからだったのかもしれない

それからずっと会いたいと思ってて
それを愛佳に知って欲しくて

別に暇でもない買い物の途中とか
急に電話したりして

すれ違う人混みに愛佳を探していた

今もそう

ずっとずっと、愛佳を探してる

こんな日は愛佳も大好きなあの子と過ごしてるはずなのに

こんな人混みに居るはずないのに

そう思うと、胸の奥の奥が苦しくなる


どうすれば、この想い吐き出せる?
楽になれる?

サンタさん。
この想い、愛佳に届けてくれますか?

できれば横に居てほしい
どこにも行って欲しくない
私の事だけをずっと考えて居て欲しい

これが、今年の私の願いです

サンタさんは聞いてくれるかな

けどやっぱりこんな事伝えたら
カッコ悪いし長くなるだけだからまとめるよ

さっき返せなかったLINEをもう一度開いて
文章を打った



"MerryX'mas
ふたりとも、大好きだよ。

あかねサンタ"
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