短編

□嬉し涙と悲しい涙
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「ねぇベリ。
どうして....こうなっちゃったの?」



あの日うちは何も考えていなかった

ただ無能な私は些細な事で喧嘩して
キミを傷つけて
困らせて




最悪な目に遭わせてしまった


Wただの事故W

"大丈夫、すぐに元気になる"

"愛佳は悪くないよ"


みんなそうやって口々に慰めてくれるけど、
そうは思えないや

だってうちが招いた....事故なんだから。


あの日私が勝手に嫉妬して拗ねちゃって
せっかくのデートが台無しになった

けどベリはちゃんと追いかけてきてくれた

それなのに素直になれない私は、
その温かい手を振りほどいた

少しやり過ぎたかなって振り返った先には
もう誰もいなくて

側にあった階段の下に
無造作にベリの身体が転がってる

起き上がろうとしないべり

なんで?
頭がパニックになる

救急車の中でベリの手を握りたくても
何が怖いのか震えて躊躇して握れなかった


ねぇベリ、いつ目を覚ますの?
あれからもう1週間も経ってるんだよ?

.....寝すぎだよ。


医者からは、治療は上手くいった
もう目が覚めてもおかしくないはずだ

そう言われてるのになんで?
なんで起きないの?

仕事も、あるんだよ?
今はお休みさせてもらってるけど。

できればうちだってほんとは休みたい

休んでベリの傍に居て目は覚めたら
抱きしめて1番に『ごめんね』って言いたい

なのになんで......。
なんで傍にいてやる事さえも出来ないんだよ


(カットー。本日の撮影は以上で終わります。
各自自由解散でお願いしまーす)


「...愛佳、大丈夫?」

「....うん」

「まだぺーちゃん、目が覚めないんだ」

「...うん」

「愛佳もちょっと仕事休んだほうがいいんじゃない?顔色、やばいよ?」

反強制的に鏡を見たら本当に最悪な顔がいた

顔色は白く青ざめてるし目の下にクマがある
それに目つきなんていつも以上に悪い

こんな状態でテレビに出ようとしていた自分に腹が立った

「...ねぇあかね。べりはもう.......」

「...愛佳ッ!ベリカがッ!!」

ベリの名前を聞いた瞬間全速力で走った

何があったか知らない

目を覚ましたかもしれないし
ベリの様態が急変したのかもしれない

けど何があっても、早くベリに会いたかった


「....ベリッ....ベリッ.....ベリ!」

叫びながら入った病室には理佐と
ベットに座っているベリがいた

病室に飛び込んでただただベリを抱きしめた

大きな目が開いてる
綺麗な二重が瞬きしてる
こうやって抱きしめる事が出来る

「....ベリッあのね.....」

私が今一番伝えたかったこと

言えなかった言葉

「...んん.....ねぇ」


嬉しくて嬉しくて泣いてしまいそうで、右目にうれし涙が溜まったままベリの顔を見た

「....ん?」




「.......だれ?」









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