長いお話

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SHRが終われば次の授業が始まるまでの休み時間が始まる


みんなは渡辺さんに寄ってたかって話しかけていた


『ねぇどこから来たの?』
「….茨…城」

『なんで越してきたの?』
「…パパの、転勤」

小学生みたい

小学生の頃、転校生が来ると遠慮なんて
知らないからガツガツ質問してくるあれ

ほんとにガキ。


茜『渡辺さん、可愛いね?』

オ『やっぱあかねんもそう思う?
私も思ったぁ。志田はどう?』


オダナナが私に振ってきたけど、私は少し間を空けて応えた


「……まぁ、可愛いんじゃない?」

「あぁ〜!志田が照れてる〜」

「そんなんじゃないって。
お腹空いた、購買行ってくる」


小学生みたいに群がるみんなを見ていられなくて、もう一度ヘッドホンをして購買に向かった

購買で適当にパンとパックのジュースを買って教室に戻る

あぁそう言えば次の授業って物理室だっけ?

まぁ間に合うでしょ

1つ目のパンを口に押し込み廊下を歩いてたら、見慣れない子がキョロキョロしているのを見つけた


もしかして、渡辺さん?


誰かに聞きたくても聞けない、そんな様子

私はあの、仲良くなりたいという少しの興味だけで彼女に近づいた


「渡辺…梨加さん?」

彼女は大きく振り返る

髪が風に靡いて光に反射していて綺麗だった

「…だれ?」

「同じクラスになった、志田愛佳です。
よろしく。ところでどうしたの?」

彼女は下を向いたままあの時みたいに唇を噛んだり、口を隠したりしている


人見知り、コミュ障


この部類の人なのだろうか


けどこの子はきっと物理教室を探している

手に握られた物理の教科書がぎゅっと指圧によって押し潰されているから

「…んん……」

「もしかして、物理教室探してる?」

彼女は目をぎゅっとつむって声を振り絞る


「…一緒に….行ってくれませんか?」

ぐぅ〜


緊迫した私たちしかいない空間に、彼女の声だけが響き、その直後にぐぅ〜という音がなる


「…えっ?」

「…あっ」


その容姿からは考えられない音が彼女から
は聞こえた

「…あっははははっ!!」

私は笑いが堪えきれなくて、思わず大声をだして笑ってしまう

すると彼女も、同じように笑っていた

少し頬を赤く染めて、照れてるみたいに


「…お腹空いたの?」

「うん。笑」


「じゃあさ…次の授業、サボらない?」


思わず誘ってしまった

ほんとはこんなこと言うつもりじゃなかったのに

顔を赤らめて笑う彼女を見ていたら、思わず声が出ていた
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