▼小説

□黒の魔術師(長編)
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目を覚ますと先程の様に姫の手をにぎった状態だった。しかし先程と違うのは彼女の膝の上に頭を乗せていて呼吸が楽で、胸の傷が先程より痛くない。更に周りにはエルフ族と魔術師に囲まれていることだ。


先程の人間の死体はもうなく、辺りには敵もいない。
どうやら戦争は終わったようだ。



「ギャレット様、ご無事で何よりです…!」


姫は私の手を強く握り、エルフの長は私の肩に触れた。


「娘の為にありがとうございました、」

「いいんですよ、こいつは俺に似てタフなのでね!」


父が笑い出すと皆も笑だしたがこれは全部姫のお陰だと言いたくなったがグッとこらえた。私の意識が戻った事を確認したら魔術師とエルフ族は負傷者の手当てと次の会議を始めたようで先程よりも騒々しくなった。


時間がかかりそうなので、姫から話を聞くと倒れた後すぐに私が人間の長を倒したことで戦争は終わり、傷は姫によって治癒していただいたそうだ。胸には包帯が巻かれているが出血が少ないのでエルフの力か何かなのだろう。


「姫様、危ないところありがとうございました。どうお礼申したらよいでしょうか。」

「何をおっしゃるんですか、私は貴方が生きていれば十分です。
それに命を救って下さりありがとうございました。」




軽く起き上がり姫にお礼を言うと私よりも深くお辞儀をしてきたのですぐさま顔を上げるように言うと、顔をあげた彼女の頬に血が着いていたので失礼します、と一言入れて指で血を取った。姫の頬が血のせいなのか、戦闘後なのだか赤くなっているような気がした。


「貴方様は強くてお優しいですね、怪我は回復したと思いますが
本日はゆっくりお休み下さい。」

「そうさせて頂きます、姫様。
また会える時を楽しみにしております。」


私は父に一言言い、先程まで面倒見てやれず心配していた馬の元へ行くと怪我は無く、私を心配しているのか頭で肩をつつかれた。頭を撫で安心させてから乗ると姫は手を振って下さった。私は会釈をして高原を後にした。



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