▼小説

□一緒に居られる幸せ(番外編)
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今日は昨日の夜緊急で診た子供の病状が良くなったのと暗くなっても緊急で薬が必要な人も来ず、早く帰って来られた。
この仕事は色んな人に感謝され、人の役に立つことが出来て昔の役目より大分良い。それに帰ったらリリーが待っていてくれる。


きっと人間の足だったら1日中歩いてないと着けないだろう道のりを俺は空を飛んでものの30分程度で帰った。地下へ歩く道はやはり神秘的な空間で、此処に来ると一日の疲労が跳ぶ様な気がするくらい神々しい場所なんだが、どうやら此処に住んでいるエルフ以外の種族は俺ともう一つの家庭だけなようだ。


そんな所でリリーと住めるのは本当にありがたい事で、俺は家に帰ると勝手に飯が出てきて守りたいって思える人と一日を共に出来るという事が今でも夢の様に思える。


しかし家まで歩く途中いつもなら家の窓から光が漏れて見えるのだが今日は真っ暗でまるで人が居ないかの様だ。夜飯の良い匂いもしなければ音も無しで緊張が走る。一般の家庭なら散歩にでも行っているのだろう、と思うだろうがリリーはいつもこの時間絶対家に居るはずだし仮に何処かいって危ない目にでも遭われた困る。確かに束縛強い事なんだが今はこの生活をどうしても手放したくない程幸せで俺にとっては大事な時間だった。
それに監禁していた男二人組が捕まったわけでも見つかったわけでも無いので、いくらエルフが此処に沢山いようが心配なものは心配だった。


急いで家の鍵を鞄から取り出して家に入りリリーの名前を呼ぶが、もちろんいつも聞こえるキッチンからの“おかえりなさい”もない。小走りで部屋を周ると寝室でスヤスヤ眠る彼女を見つけた。ほっと胸を撫で下ろして肌蹴ていた毛布を掛けて俺はキッチンに向かいなるべく大きな音を立てないように夜飯を作った。昨日と今日は仕事のお陰でリリーの睡眠時間を削ってしまったのでそのお詫びも兼て夜飯くらいは作ったのだが、起きてくる気配がないので寝室へ行くとさっきのままの状態だった。


そういえば、初めて此処に来たときもこんな感じだったなと思いだしながら頭を撫でた。
初めて会った時は髪の長さはバラバラで、顔も傷だらけで痩せてて、生きているのにも必死な様だったのに今は本当に美しい女性だ。看病している時死んじまうと思ったが、あの時の薬でリリーは今此処に居れる訳だし俺は今街の薬師(やくし)になれた訳だから趣味だが薬草の勉強と調合をしといて良かったと実感する。



「俺にとってお前は幸運の天使そのものだ。」



額にキスを落とすとまるでどっかのおとぎ話の様に目を覚ました。何やらニコニコしているので起きてたのだろうと思い、あわせる顔がないので顔を反らした。



「貴方は何時も私が寝ている時に私の喜ぶことするのね!」


「何時もって事は薬の時意識あったのか。」


「ええ!うっすらだけどちゃんと覚えてるわよ!
今度はちゃんと私が起きている時にしてね。



ん〜…良い匂い!作ってくれてありがとう!
早く食べましょう!」



ベッドから腰を上げて軽い足取りでキッチンへ向かう途中、腕を引き自分の胸に引き寄せ今度は唇へキスを落とす。


驚いた顔をしていたがすぐさま顔を赤くし笑顔で“ありがとう、幸運の龍様!”と言った。



__End
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