★愛欲の施設 - First Wedge -
□第二夜 許された味見
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「ッあぁ…〜〜ぅアッ」
上でも下でも感じる快楽に変わりはない。
止まることも、止めることもできない快楽は、陸に奪われるように重なる唇の隙間からも漏れ出ていく。
もうどうでもいいとすべてを放棄したくなるほどの気持ちよさに溺れていく。
「──ァ、いやぁッ!?」
「涼ってば、この子どこで見つけたの?」
勢いの増した陸の腰に、優羽は驚く。
そして見開いた瞳の端に、刺すような視線を見つけた。
「イヤッ!?」
涼が見てる。
いつからそこにいたのか、記憶の中では後ろから体重を支えていたはずの涼が少し離れた場所にいる。
腰をすえ、腕をくみ、まばたきもせずにジッと優羽を見つめていた。
「もしかして、涼がいたこと忘れてたの?」
「──ッ!?」
ふいに耳の横で聞こえた陸の声に、優羽はビクリと肩を震わせる。
つながる陸に、その胸中はありのまま伝わってしまった。
「へぇ。」
そのいたずらな笑みに悪寒が駆け抜けたのは気のせいではない。
「キャッ!?」
「ほら、わかる?」
グイッと引き起こされて、陸と優羽の上下が入れ換わる。
目の前に座る涼の視線を真っ向から受けながら、優羽は真下の陸の瞳に鋭利さが増したのを感じ取った。
「ヒッ…〜〜ぁヤァァッ」
突き上げられて、宙に浮いたからだは、重力に従って陸のモノを埋め込む。
真下から陸。真正面から涼に見つめられる感覚は優羽の精神を異常に追い込むように深く突き刺さってくる。何度も何度も揺れる双方の視線をかわすことも出来ずに、優羽は顔を両手で覆(オオ)い隠そうとした。
「だめ。ちゃんと見て?」
泣きたくなってくる。
「今、優羽を食べてるのは誰?」
陸に両手を引きずり下ろされるついでに、快楽を突きつけられた。
また、勝手に身体が逃げようとする。
「ほら、ちゃんと食べられなきゃダメじゃん。」
「──ッ…アァッ…ひ…──」
「涼なんか、忘れちゃいなよ?」
「──…ッ…」
逃がさないとでもいう風に、腰をつかまれ、突き上げられ、半身を起こした陸の唇に乳首は消えた。
軽く歯をたてられ、異様に光る胸の頂(イタダキ)から沸き立つ甘い感覚は、一瞬でも涼を忘れさせるには十分だった。
陸に食べられている。
身体中が、陸のすべてに染まっていく。
ついさっきまで、涼の匂いを全身にまとっていたはずなのに、この部屋に充満する匂いは陸一色に変わっていた。
「り…く…ッ…〜〜陸…ぅ」
「何?」
「アァッりく…ッ見ない…っで…ぁ涼…っ」
ギュッと抱きついた感覚が、弓なりにのけぞる。
誰にも許しを乞わなくてもいいはずなのに、自然と懇願の声が優羽の口からあふれ出る。
「ァアァいやぁアァアァッァ」
二つの視線が交差する中央で、陸を強く締め付けながら、優羽はかん高い鳴き声をあげた。
どうしてと自由の利かない自分の体が疎ましくなる。
体の奥底から込みあがってくる快楽に終わりはないのか、声がかすれ、涙があふれるのに、気持ちよくてたまらない。
もっと欲しいと願いそうになる自分が怖い。
「あッ…〜〜はぁ…ぁ…っはぁ」
こんなにも息が出来ないのに、こんなにも身体の自由がきかないのに、陸はなぜ平然と動き続けることが出来るのかと疑問に思う。
涼もそうだった。
意識が朦朧としていく中に、ふと彼らの姿を思い出す。
白銀になびく毛並みと四本の足。古来種ともいえる崇高さを感じさせる肉食獣。
「ねぇ、優羽。もっとちょうだい?」
彼らが息一つ乱さず動き続けることができるのは、彼らが捕食者だから。
単なる食事は、獲物側に与える負荷とは異なるもの。食べられる側は、いつだって必死なのだ。
食べる側の飢えを満たすために、体は抵抗しても本能が喜びを覚えていく。
「はぁはぁアァッ…っ…ヒァ…あっ」
陰湿な音は、食事の音。
「ぃヤッ…あ…アァッ…はぁ」
鳴き声は、最高のスパイス。
「ン…ッ…アァァッ──」
放つ色香は、捕食者を更なる奥地へと誘い込み、淫乱な世界を提供する。
満足するまで。永遠に。
「逃がさないよ。」
「ヒッ…も…だめ…ッあ」
どうして素直に殺してくれないんだろうか。
銀色の瞳をみるたびに、彼らが人間ではないことがわかるのに、優羽は現世にとどまることを願いそうになる自分を否定していた。
望んではいけない。
食べられるため、彼らの飢えを満たすために、自分の意志で来たのだから抵抗は許されない。
「もぅ…ゆる…〜〜ぁて」
それでも体は勝手に許しを求める。
陸になのか、涼になのか、どちらにも訴えるように優羽の声は喘ぎ声に犯される。
「りょ…ッう…はぁ…り、クッ」
声がかすれてうまく出てこない。
こみ上げてくる悦な享楽が輪をかけて優羽を淫乱な世界へ誘いこんでいた。
「〜ッ……アァァッ」
力がうまく入らない。
陸の上で踊るように腰をくねらせる優羽の姿に、涼の瞳がすっと細く変わる。