★妄想小箱 - 読切 -
□夜蝶
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なぜ こんなにも
他の世界は キラキラと
輝いて 見えるのでしょうか
ないものを追い求め
本来の自分を見失いながら
探し続けるのでしょうか
夜 蝶
〜yacyo〜
夜も更け、満足に月の光も届かない暗い暗い闇の中。
聞こえるのは幾千もの花の声だけで、その上を無数の蝶たちが舞っていました。
誰もが本性を偽りながら、それでも群れる居場所を追い求めています。
顔に笑顔を貼り付け、弱味を握られないように虚勢をまとい、偽りの世界と知りながら言葉を交わしていました。
そんな花園の中を一羽の蝶がヒラヒラと舞っていきます。
ぶつからないように
捕まらないように
目にうつる全てがヒドク非現実で、ここに確かに存在しているのに、その誰もが作り物のような……蝶は、そんな複雑な思いを抱いておりました。
ひとりぼっち
感じるのは心の孤独?
自分が探しているのは何なのか、それさえもわからずに、あっちにフラフラ、こっちにフラフラしています。
「俺たちの蜜をすいにおいで。」
「いいえ。私たちのところへいらっしゃい。」
赤や青など、思い思いの衣装に着飾り、不安定な蝶を手招く花の群れ。
そこは惹(ヒ)かれるほどにとても幻想的で、この世のものとは思えないほど綺麗な場所でした。
「もしかしたら……」
蝶は、思います。
あそこに行けば、何かが見つかるかもしれない。
あそこに行けば、何かが得られるかもしれない。
ずっと飛び続けていたので、お腹もすいていました。
「ほんの少しだけなら……」
誘われるままに、蝶は花園に近づいていきます。
そこは、本当にとても美しく、束の間でも癒される気がしました。
しかし、おかしなことに……いくら食べても、空腹は満たされません。
それどころか、疲れも増すばかりで、蝶は確実に弱ってしまいました。
「このままでは、私は死んでしまう。」
それでも目的地がない限り、蝶は飛び立てません。
長くいすぎたのです。
もう、自分だけで立ち上がるには限界がありました。
弱った蝶がホトホト困り果てていると、そこに別の蝶が飛んできて言います。
「まぁ、なんてみすぼらしい蝶でしょう。」
その蝶は、他のどの蝶よりも……いえ、この世界に存在するすべての中でも鮮やかで美しく、自信に満ちているように見えました。
「ここは、私の花園なの。あなたみたいな汚い蝶は、いらないわ。」
さっさと、どこかへ行ってちょうだい。と、その蝶は続けます。